『第453話』 炎症抑えるステロイド剤

ステロイドホルモン、副腎(じん)皮質ホルモン、あるいは単にステロイド剤などと呼ばれる薬剤は、体内の副腎という臓器で作られる副腎皮質ホルモンに似た物質から作られた薬の総称だ。

これらの構造式は中にステロール骨格と呼ばれる形を持っており、それゆえにこの名で呼ばれる。

当然ながら副腎皮質ホルモンの薬理効果と同様の効果を期待して製剤化されたものだ。

普段、体内のホルモンは過剰になったり、不足になったりしないよううまく調節されているが、心身のストレスが生じたり、体のどこかに炎症が起こったりすると副腎皮質ホルモンが多量に分泌されてくる。

体に傷ができるとそこには炎症が起きる。炎症は一種の生体防御反応ではあるが、過剰になると周辺細胞が破壊されて損傷を受け、生体にとっては不利となる。

そこで副腎皮質ホルモンは、白血球やリンパ球などの免疫細胞を減らし、免疫力を低下させて炎症を抑えようとする。

こうした作用が関節の炎症を伴う関節リウマチや気管支喘息(ぜんそく)、薬物によるアレルギー反応などに抜群の効果を示す。

しかしながら免疫力を抑えてしまうので多量に使用すると、細菌感染などに対して抵抗力が低下してくる。

ただし、このような副作用は主に内服や注射などにより薬が全身に作用した場合だ。

アトピー性皮膚炎や湿疹(しっしん)に使われる軟膏(こう)やクリームではよほど広範囲に使わない限りこのような心配はない。

ステロイドの軟膏類は5段階の強さに分かれている。赤ちゃんや子供に使うのは真ん中ぐらいの強さかそれ以下のものにする。顔は皮膚が薄く、敏感なので体に塗るものより弱いものにする。

大人の場合も、顔や外陰部、わきの下などは弱めのステロイド、胴体や腕は強め、手のひらや足の裏などは最も強いものといった具合に使い分ける。

ステロイドの塗り薬を長期にわたって使用する必要がある場合には、塗った部分の皮膚が薄くなる、毛細血管が浮かび上がる、ニキビのようなものが出てくるなどの副作用に注意する。

塗り薬のステロイド剤は薄く延ばすようにし、塗った直後にかゆみが増すようなときは10~20分後に再度塗るようにする。