『第458話』 「HACCP」と「GMP」

食品や飲料は、生活空間に開放された状態で置かれる限り、常に病原性微生物に汚染される可能性を持っている。日常生活であれば、食中毒に十分注意を払い、なおかつ万が一食中毒になってしまったら適切に対応するという考え方で対処している。しかし、これは地上での話。宇宙に出て行ったら、食中毒は死を意味することになる。

こうした考え方から、

SA(アメリカ航空宇宙局)はロケット部品の品質管理を行う「HACCP(危害分析重要管理点)」を宇宙食にも適応させた。「HACCP」とはハザード・アナライシス・クリティカル・コントロール・ポイントの頭文字で「ハサップ」と呼ばれている。

かつての品質管理は、最終製品の品質検査を行い、これに合格すればよいという考え方だった。この考え方には工程管理という考え方はなく、しかも、検査は抜き取り検査で、全製品を検査するわけではなく、突発的に不良品が出ることがあった。

これを防ぐためには製造工程全体を管理する「HACCP」の考え方が必要になる。工程ごとに危険分析と予測を行い、予測される危険因子を排除するための重要管理点に対して管理基準(許容基準値)を設定する。そして、管理基準を超えそうになった段階で、早めに対応を図るというものだ。このため、「いつ」「どこで」「だれが」「何の目的で」「どの基準に従い」「どのような作業を行ったのか」をリアルタイムで記録し、証拠書類として残すことになっている。

医薬品の製造に関しても、同様に「GMP(グッド・マニファクチャー・プラクティス)」という品質管理システムを取っていて、医薬品製造工場に対して行政担当者が定期的にGMP査察を実施している。

しかし、医薬品においても今回の乳製品による食中毒事件と同様に、度々異物の混入や規格外医薬品の回収が報道されている。平成7年7月に「製造物責任法」が施行されてから、報告件数が増加し、不良医薬品、不良医療用貝の回収は年間百数十件にのぼる。

完全なはずの「HACCP」「GMP」にも欠点がある。定めた内容を実行しなければ何もならないということだ。その実効性を確認するためには、行政試験や査察の強化とともに自己防衛のために外部の試験機関による試験の実施といった確認作業が必要だ。

医薬品に関しては、各薬局・薬店が自主的に試験検査を実施し、品質の確認をしている。