『第463話』 服用時、おならは遠慮なく

食後や食前、食間とはおなじみの薬の服用時間のことだが、ここに食直後、食直前などという新たな表現がされる薬が登場してきた。

食後服用の場合、食事をして30分程度たってから薬を飲むように説明される。しかし実際には、10分後や20分後に飲む人もあり、説明する側もさほど厳密さを求めないこともある。

食前服用のお薬は、食事をする30分ぐらい前に飲んだ方が明らかに効果がある。しかし食後に飲んでも全く効果がなくなるわけではない。そういう場合は忘れたら食後でも良いという説明を受けているはずだ。

ところが「食直前」の指示のある薬は必ず食事のちょっと前に服用するのが大原則となる。忘れっぽい人はおはしに薬をくくりつけておくぐらいの気持ちが必要。それほど食前であることが大事なのだ。

その薬のひとつに食後の血糖値を急激に上げないようにする糖尿病の薬がある。アカルボースやボグリボースがその成分だ。

食後に過血糖が起きる人では、従来の糖尿病薬でうまく血糖値をコントロールできないことがあり、これらの薬剤が処方される。

この薬はご飯やパンなどの食物と混ざり合って初めて効力を発揮する。飲み忘れても食事中ならまだ間に合う。

薬が効きすぎて低血糖状態になると強い空腹感や脱力感、動悸(どうき)、手足の震えなどが起きる。この場合、ほかの糖尿病薬とは違って砂糖やあめ玉では回避できない。このような薬を服用する場合は、ブドウ糖を病院から分けてもらい持ち歩くか、それがないときはブドウ糖がたくさん入った清涼飲料水でも良い。

アカルボースやボグリボースは食物のでんぷんや砂糖といった炭水化物がブドウ糖に分解されるのを抑え、速やかにブドウ糖が血中に放出されないようにする。

そのため未消化のでんぷんや砂糖が腸内で腸内細菌に分解され、炭酸ガス、メタンガスなどが発生しやすくなる。

これにより腹部膨満(おなかが張る)、おならがたくさん出る、おなかが痛いなどの症状が出ることがある。

この薬を服用しているときは周囲に遠慮せず、できるだけおならを出すようにした方がいい。