『第464話』 食直後に飲んでほしい薬

空腹時に飲んだほうがいい薬もあれば、逆に空腹時では全く効果のない薬もある。

骨粗しょう症治療薬のエチドロン酸ニナトリウムという薬は食後に飲むと吸収率がほとんどゼロ。空腹時に飲んでもわずか3%だ。

このわずかな吸収率を確保するには空腹時を狙って飲むしかない。

食物ではないが、鉄やカルシウム、マグネシウム、アルミニウムを多く含むミネラルを加えたビタミン剤や胃腸薬なども同時に飲んではいけない。服用前後に、牛乳やヨーグルトをおやつ替わりにちょっといただくのも無論いけない。

この薬は食物中のカルシウムや金属と結合すると、全く消化管から吸収されなくなってしまうからだ。

同じ骨粗しょう症治療薬でもメナテトレノンという比較的新しい薬は食直後に飲む必要がある。

こちらは食後すぐに分泌されてくる胆汁が吸収に絶対に必要だ。この薬は一種の脂溶性ビタミンで胆汁中の胆汁酸によってミセル(電荷をもつコロイド粒子)という形にならないと吸収されない。

胆汁や膵(すい)液は脂肪を消化するために出てくるので食事をしないとほとんど分泌しない。

イワシやサバなどの青魚に含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)は血管のしなやかさを保ち、血液を固まりにくくし、かつ血液中のコレステロール量も低下させる優れた薬理作用を持つ。

エスキモーの人たちやグリーンランドに住む人々は狭心症や心筋梗塞(こうそく)、脳血栓などを起こす人が非常に少ない。

これも魚介類を豊富に食べることでEPAの効果が出ていると考えられている。

この成分は薬に生かされ、高脂血症の人や閉塞性動脈硬化症で手のしびれを感じる人などに使用されている。

EPAは一種の脂なのでこれを消化するにはやはり胆汁が必要になる。こうしてこの薬の最適な服用時間は胆汁分泌が一番盛んな食直後と決まってくる。

このように、食後服用が一般的だった薬も、その特性から服用時間がさまざまに異なるようになってきた。

最大限の効果を引き出すためには飲み合わせ、食べ合わせなどを含め、患者さんにお知らせしたい情報が盛りだくさんになってきている。