『第469話』 うつ病患者は休養が第一歩
天気がしぐれるようになり、肌寒さや日没の早さを感じるころになると、だれしも気がめいったり、ふさぎこんだりする。あの夏の快活さ、やる気はどこへやらという人も少なくないだろう。
東洋医学では自然とうまく調和して体を病気から守ろうとする知恵が多く語られているが、季節の生活法などもその一つだ。
例えば漢方の古典である黄帝内経(こうていだいけい)には、「春は夜遅く寝て、朝は早起きし散歩せよ、夏は遅く寝て早起き、日に当たっての労働を嫌うな、秋は早寝早起き(中略)、そして冬は早く寝てゆっくり起き、気持ちもあまり積極的にせず、沈思黙考すべき」とある。
実際、冬は血圧が上がりやすく、朝はかなり冷え込むので早起きは脳卒中の可能性が高くなる。またインフルエンザにかからないようにするには外出を控え、家で過ごすのも得策だろう。
とにかく冬はそう頑張ることもあるまいということのようだ。
これは、うつ病を予防する考え方にもつながる。うつ病はいまや一部の人の病気ではない。配偶者の死や病気、失業など悲しい出来事だけが引き金になるわけではなく、栄転や昇進、結婚など喜ばしい出来事でもそれが大きなストレスとなれば発症することがある。
うつ傾向になるときは心身ともに疲労している。まずは頑張るのをやめ、十分な休養を取ることが大事だ。仕事を休んだり、仕事量を減らすことは治療の第一歩。そして薬物治療も開始する。
抗うつ薬は即効性があるものではなく、効果が出始めるのに早いものでも1、2週間ほどかかる。しかし、副作用は飲み始めのころから出るものが多く、服薬を継続できない人がいるのはこのためだ。服薬の目安としては、まず副作用が現れない量を医師とよく相談し徐々に量を増やしていく。効果の得られる十分な量に到達したら、4~9カ月ほどその量を続け、それから徐々に減らしていく。
こうして服薬期間は1年前後になることがある。その後も再発防止に少量の薬は必要だ。
うつ病はだれにでも起こり得る「心の風邪」。心身にも冬の季節が訪れそうになったときに、ちょっと思い出したい一節だ。