『第472話』 インフルエンザにも薬はある

11月はインフルエンザの予防を考える月。予防にはワクチン接種が有効な手段だ。

昨年はインフルエンザが流行してワクチンが不足した。ワクチンは1~4週間の間隔をおき、2回注射するのが基本だが、7月に薬事法が変更となり13歳以上は1回の接種でも良いとされた。65歳以上の高齢者は、1回の接種で十分な抵抗力が得られるとする研究報告がある。接種回数は、年齢、体力、周囲の環境などを考慮する必要があるので医師と相談してもらいたい。

ワクチンを打ったからといってインフルエンザにかからないということではない。ワクチンを接種すると、インフルエンザに対する抗体が体内にでき、再び同じウイルスが入っても、抗体が総攻撃をかけて症状が軽くすむ。

さまざまの細菌やウイルスを原因とする「風邪症候群」(いわゆる風邪)とインフルエンザは全く別の疾病と考えるべきだ。インフルエンザの感染力は強く、普通の風邪なら鼻水、鼻詰まりなどから、やがて37.5度前後の熱が出るのに対し、インフルエンザは、突然、38~40度の高熱が出て、頭痛、悪寒、筋肉痛、おう吐、下痢などが起こり体力を消耗させる。

抗生物質は細菌と構造が違うウイルスには効かない。そこでインフルエンザには抗生物質と全く違う薬を使い、感染したら直ちに薬を服用する。

インフルエンザウイルスにはいくつかの型があり、現在有効とされる薬はA型とB型に対してだ。A型だけを調べる簡単な検査キットがあり、病院で15分ほどで結果が出る。A型とB型の両方を調べるキットもあるが、こちらは健康保険の対象外でワクチン同様自費となる。

A型ならアマンタジンという薬がある。ウイルスの増殖を抑える効果があるが、脳の中枢神経に作用する薬でもあるため、不眠やふらつき、けいれんなどの注意が必要だ。A型とB型の両方に使えるのが、ザナミビルという薬剤。専用の吸入器で吸い込み、のどなどの感染部位に直接、到達させるものだ。ザナミビルはアマンタジンに比べ、耐性ウイルスができにくく、副作用も少ないとされている。

10月22日付のこの欄で紹介した「薬で風邪そのものは治らない」に苦情を頂いた。「風邪は寝ていれば3日で治る」とのコラムを読んだ家族からで、受診の機会を逸し風邪をこじらせたというもの。風邪症候群は、我慢する人が多く、様子を見るのも3日目までという意図だった。

38.5度以上の発熱はすぐに受診して解熱剤を使う必要がある。風邪症候群は、体力との勝負という面がある。ゆっくりと休養できる環境にあるかを十分考慮し、受診の機会を逸しないよう心掛けていただきたい。