『第473話』 ピロリ菌の治療が保険適用に

先週、お知らせしたインフルエンザA/Bの検査およびヘリコバクター・ピロリ菌に感染しているかどうかを調べる検査と、除菌治療法が保険適用となった。また、治療の結果、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌を確認する検査も保険適用が認められた。

日本の胃潰瘍(かいよう)と十二指腸潰瘍の患者数は、平成8年調査で116万人。胃潰瘍の94.3%、十二指腸潰膓の98.7%の患者がヘリコバクター・ピロリ菌に感染している。年齢別ヘリコバクター・ピロリ菌の感染率は、20代未満では13%だが、30代32%、40代53%、50代63%と高齢になるほど感染率が高い。菜食主義者の感染率が高いことから経口感染が疑われている。

発展途上国においては、小児の場合で、既に80%以上が感染していることなどから、昭和30年以前の未熟な衛生環境の中で育った世代では、容易にヘリコバクター・ピロリ菌による感染が起こったと推定される。

胃潰瘍と十二指腸潰瘍の1年以内の再発率は、胃酸分泌を止める薬で維持療法を行った場合で20~25%であるのに対して、ヘリコバクター・ピロリ菌を除菌した後に陰性を確認した患者では2.0~2.6%と10分の1に減少する。

ヘリコバクター・ピロリ菌は、積極的な除菌を行わない限り、自然にいなくなることはない。胃潰瘍と十二指腸潰瘍の治療と再発防止のためには、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌が必要で、その検査方法と治療方法が保険適応になることが望まれていた。

除菌に使われている薬は、強力に胃酸の分泌を止めて胃潰瘍を治療し、除菌を助けるランソプラゾールと抗菌剤のアモキシシリンおよびクラリスロマイシンの3剤を併用し、7日間服用する。除菌の確認は4週間後に行われるが、検査方法によっては、6カ月後に検査が実施されることがある。

治療成績は胃潰瘍で87.4%、十二指腸潰瘍で90.7%と高率だ。しかし、一部の薬の副作用として発現する病態や、その他の細菌が関与している可能性があることも報告されている。

すべての胃潰瘍や十二指腸潰瘍が除菌療法で完治するわけではない。胃潰瘍や十二指腸潰瘍を誘発するストレスを取り除く工夫も必要だ。主治医の話をじっくりと聞いて治療してもらいたい。