『第474話』 抗がん剤の副作用を知る

がんを手術で切り取っても肉眼では分からない小さながん細胞が残っていたり、転移している可能性を否定できないときがある。そのため、手術後も抗がん剤を続けることがある。また、手術前に抗がん剤を使ってできるだけ、がん細胞を小さくすることも行われている。

抗がん剤といってもその形態は、普通の薬と変わらず、錠剤や散剤、注射、点滴などがある。ただし、抗がん剤の多くは薬を何回か投与した後、投与を一定の期間休むといったサイクルで続けられる。一定期間、休薬するのは抗がん剤による副作用をチェックするためだ。抗がん剤の場合、程度の差はあるものの、副作用は避けられない。

そこで、あらかじめ起こりうる副作用を知っておいてもらうとさまざまな対策を立てやすく、精神的にも落ち着いて対処できる。特に、細胞分裂が速い骨髄(こつずい)細胞や口腔粘膜、胃腸粘膜、毛根細胞は、抗がん剤の影響を受けやすい。そのため、貧血、吐き気、下痢、脱毛などが現れやすくなる。

脱毛は薬によって抜けるものと抜けないものがあり、抜け方にも個人差がある。抗がん剤投与から、約2~3週間後に起こることが多く、治療が終われば3~6カ月後に再び生えてくる。髪をあらかじめ短くし、マイルドなシャンプーを使ったり、ドライヤーは低温で使用するなどしてできるだけ髪への刺激を少なくする。

この副作用は精神的にも動揺が大きいので、帽子やウイッグ(おしゃれ用かつら)で新しいおしゃれを楽しむくらいの気持ちを持つことが大事。医療用かつらもあるので、医療スタッフに相談してほしい。

日常生活で吐き気が起きたときは、横向きに寝て体を内側に曲げて安静をはかる。冷たい水でうがいをしたり、氷やミントのキャンデーを口に含んでみる。煮物や煮魚、焼き魚などはにおいが吐き気を誘発しやすいのでこのときは避ける。

口内炎ができたら早めに医師に知らせ、消毒作用のあるうがい薬でこまめにうがいし、薬を塗る。寝るときもマスクを着けるなどして口の中を乾燥させないようにする。食事は冷ましてから取るようにし、柔らかいものやとろみがあるもの、裏ごししたものなどが食べやすい。

他にも副作用を乗り切る対策は、まだまだあるので、医師、薬剤師、看護婦などに気軽に相談してほしい。