『第478話』 痔持ちは飲み過ぎに注意を

 各家庭にも暖房完備のトイレが増えた。おかげで、冬でも少々の長居はなんのそのである。トイレが寝室から離れて遠くにあったり、寒かったりしたころは、御虎子(おまる)が各家庭にあったのではないだろうか?n 12世紀終わりごろ、病草紙というものが盛んに描かれていた。当時の奇病と言われるものをイラスト風に表したものだが、その1枚に次のような言葉が添えてある。n 「あるおとこ、むまれつきにて、しりのあなあまたありけり、くそまるとき、あなごといでて、わずらわしけり」と。n 「くそまるとき」とは、「排便するとき」の意。ここから、「おまる」という言葉が生まれた。この男は、多発性痔瘻(じろう)だったと考えられる。n 痔瘻は、肛門付近に穴が生じて膿が出るものだ。膿が出る前に肛門の周囲が腫(は)れ、痛みも激しく熱も出て大変つらい痔だ。このほかに、いぼ痔と呼ばれる痔核と切れ痔と呼ばれる裂肛がある。この3種が一般的に「痔」と呼ばれている。n 痔になると、なかなか病院に行きにくいものだが、そのままにしておくと徐々に進行して生活にも支障を来すようになる。痔は、診察してもすぐに手術になるわけではなく、座薬や軟膏(こう)で腫れや痛み、出血などを抑える方法が取られる。n 痔瘻は感染症のため、約40%の人は手術が必要とされるが、それ以外の切れ痔やいぼ痔は10%程度だ。n 忘年会真っ盛りだが、アルコールの取り過ぎは末しょう血管を拡張させる。いぼ痔のところには、多数の静脈が集まっているため、飲み過ぎると、いぼ痔が大きくなってしまい、痔持ちの人は要注意。下痢もまた、肛門刺激になるので、暴飲暴食をして下痢を招かないようにする。n トイレが快適でも、正常な排便時間はだいたい1分間だ。長くても3分まで。それ以上力んでいると、肛門に圧力がかかって痔が悪化する。n これからの寒い時期は、使い捨てカイロを肛門部に下着の上から当てたり、入浴で血行を促進させたりして痛みを和らげるとよい。温泉で暖まるのも良いが、硫黄泉は少々刺激があり、痛みを生じることがあるので泉質には要注意。n 痔はいつも暖めるのが良いわけではない。直腸や肛門周囲に膿がたまり、炎症を起こしている痔瘻では、冷たいタオルなどで冷やすほうがよい。n