『第484話』 風邪薬の服用は適正に

昨年11月、FDA(米国食品医薬品局)のホームページに突然、フェニルプロパノールアミン(PPA)に対する製造中止勧告が掲載された。厚生省も国民も同時に得た情報で、同省は対応に追われ、インターネッ卜時代を象徴する出来事となった。

PPAには交感神経を刺激する効果がある。交感神経が刺激されると血管が収縮する。この作用で鼻腔(びこう)粘膜の毛細血管が収縮して充血が治まり、鼻水や鼻詰まりが改善される。日本では医療用及びOTC薬(大衆薬)として、鼻炎川風邪薬や鎮咳去痰(ちんがいきょたん)薬の成分として使われている。

しかし、血管が収縮するのは鼻腔粘膜だけではない。全身の血管が収縮するために血圧が上昇する。また心臓の収縮力が増し、心臓から排出していく血液量が増加する。こうした結果によって脳内出血の傾向が高まる。

米国では風邪薬だけでなく、日本で承認されていない食欲抑制薬としても使われている。このため、やせ薬として長期間服用することや、過量に使用する例が多くみられ、それに伴う副作用が報告されていた。94年から大規模な疫学調査が行われ、今回の結果となった。日本では昭和36年に承認されてから2倍量を服用したためと思われる脳内出血事例が1件報告されている。その後、患者さんは回復している。

日本で使用する1.5倍の150ミリグラムを1日の上限として長期に連用していた米国。そのため日本では、高血圧や心臓病、甲状腺(せん)機能亢進症の人らに注意を促し、脳内出血の初期症状に現れる。激しい頭痛などが起こったときには受診を勧める内容に使用説明書を改訂した。

しかし、本当に日本で食欲抑制薬として使われていないのだろうか?

インターネット上には、PPA含有ダイエット商品を個人輸入して使用している書き込みが見られる。さらに、輸入代行業者に至っては「PPA含有ダイエット商品は取り扱っていませんのでご安心ください」という記述の隣にエフェドラ含有のダイエット商品の広告を載せている。

エフェドラとは麻黄のことで有効成分はエフェドリン。

主に鎮咳薬として使われるが、PPAと同様、交感神経を刺激する。服用に当たってはPPA以上に注意を要する。多くのやせ薬と称して外国で取り扱われている一連の薬物は、交感神経あるいは中枢神経に対する作用を持っている。くれぐれもご用心を。