『第485話』 汗をかくくらいの入浴を
アトピー性皮膚炎は診断が難しい病気だ。よく間違えられるものに接触性皮膚炎がある。接触性皮膚炎はいわゆる「かぶれ」のこと。金属や化粧品、毛染めや動植物など特定の物質に触れたときに起こるので、それらを除去すれば症状は治まる。
アトピー性皮膚炎と診断され、30年近くも皮膚症状と格闘してきた人の中には、趣味の油絵の絵の具の中に含まれるニッケルが原因だったという人もいる。手袋をして絵の具を扱うようにして、ようやく皮膚炎から解放されたという。接触性皮膚炎は原因が一つ、あるいは数種の場合が多く、原因が分かればそれを取り除くことで治る。
一方、アトピー性皮膚炎は少なくとも三種以上の因子が関係していて、それらを除去するのは難しいとされる。
アトピー性皮膚炎を起こす人は二つの特徴的な素因を持つ。
一つは体の外から入ってくる異物に対してこれを排除するための物質を過剰につくる傾向があり、そのため免疫反応が過剰に起こってしまうこと。もう一つはアトピー皮膚と呼ばれる汗や皮脂を分泌する能力が低い皮膚を持っていることの二つだ。
汗や皮脂は皮膚に潤いを与え、バリアとなって化学物質など外界の異物の侵入を防いでいるが、アトピー皮膚ではこのバリアが弱い。このようなことから炎症や湿疹(しっしん)が起こりやすくなる。
これらの二つの素因にダニや花粉などアレルギーを起こす物質やせっけん、ヘアケア製品など化学物質の刺激などさまざまな条件が加わってアトピー性皮膚炎が形成されていく。
しかし、最近ではこれらの素因がなくてもアトピー性皮膚炎になる大人が増えている。一人暮らしを始め、浴槽につかるのが面倒でシャワーだけにしているうちに皮膚がかさかさになった例や、常にエアコンを使い汗をかかない生活で乾燥肌になった例などがある。
汗は保湿剤となり、皮膚の潤いを保つが角質層まで水分を浸透させるようにしないとかえって乾燥する。汗をかくには40度前後のおふろに最低10分はつかる必要がある。その後には保湿剤を多めに塗って肌の乾燥を防ぐようにするとさらに効果的だ。