『第488話』 葉酸で先天性異常のリスク低減
よく知られているはずのビタミン。ビタミンに関する多くの書籍が書店に並んでいるが、これらの本に全く記述されていない内容が新たに分かってきた。
今日の主役は葉酸。別名フォラシンとも言い、その名の通り植物の緑葉に多く含まれているビタミンだ。このほかレバー、じん臓、酵母にも多い。不足すると核酸の合成を阻害して細胞増殖がうまく進まなくなるので、これを応用した白血病治療薬がある。また、小児に起こりやすい巨赤芽球性貧血という悪性貧血を引き起こすことで知られている。
厚生省は昨年末、妊娠可能な年齢の女性の葉酸摂取について適切な情報提供を行うよう関係者に通知した。これは先天性異常の一つ、二分脊椎(せきつい)などの神経管閉塞(そく)障害のリスクを低減させるために妊娠1ヵ月以上前から妊娠後3ヵ月までの間、栄養補助食品から最低1日当たり0.4ミリグラムの葉酸を摂取するよう情報提供しようとするものだ。しかし、1日当たりの摂取最は1ミリグラムを超えてはいけない。
神経管閉塞障害とは、脳や脊椎の癒合不全のことを言う。主に先天性の脊椎の癒合不全を二分脊椎と言い、生まれたときに腰部の中央に腫瘤(しゅりゅう)があるものが最も多い。また、脳に腫瘤のある脳瘤や脳の発育ができない無脳症がある。
神経管閉鎖は胎生3~4週間から始まり、28週までに終わる。この過程で神経管閉塞障害が生じる。原因は葉酸との関連だけではなく、遺伝的要因などを含めた多因子による複合的なものだが、葉酸の適正な摂取によって発症のリスク低減が期待できる。
葉酸は通常の食事で野菜を350グラム程度摂取するなどすれば適正量を確保できるが、食事量や吸収率に個人差があるため、栄養補助食品からの摂取が必要とされている。日本の神経管閉塞障害の発症率は、98年統計で出産(死産を含む)1万人対6人程度。このうち二分脊椎は3.2程度で諸外国よりも低いが、年々増加傾向にある。
妊娠中の健康と胎児の健全な発育には、禁煙・禁酒が不可欠で、日ごろから多様な食品で栄養のバランスを保つなど食生活に気を配ることは言うまでもない。詳細を知りたい人は、厚生労働省ホームページに掲載されています。