『第489話』 だ液や食べ物でも肺炎に
肺炎は風邪をこじらせた結果、起こるものと思っている人が多い。しかし、寝たきりの人や高齢者では食べたものが誤って気管支に入り、それが原因で肺炎になるケースも多く注意が必要だ。
食道と気管は隣り合っていてのどを通過した食べ物が誤って気管に入る可能性がある。本来はそうならないように気管の入りロに喉頭蓋(こうとうがい)と呼ばれる弁が付いている。食べ物を飲み込んだときにはこの弁が閉じ、食べ物やだ液が気管に入るのを防ぐ。
何かの拍子に食べ物が気管に入り、むせたり咳(せき)込んだりして非常に苦しい思いを多くの人がたびたび経験しているだろう。それでも何とか異物を外に出し、事無きを得ているわけだ。
しかし、高齢者では咳をして反射的に異物を出す力が弱く思うように異物を気管から出せない。また、気管に付いている弁の働きが鈍くなってきていて食べたものが気管に入りやすく、睡眠中にだ液や胃液が少しずつ気管の中に流れるようなことも起こる。
そして、これらの中に含まれる細菌が原因となって肺炎も引き超こすケースがある。誤って気管の方に入って肺炎になるので誤嚥(ごえん)性肺炎と呼ばれる。異物が気管に入ったらうつぶせになり、背中をだれかにたたいてもらうのも一つの手だ。
寝たきり状態の人は内臓が常に水平になっているため、大腸菌などの腸内細菌がのどの方に移行しやすい。それが気管から肺に入って肺炎を引き起こすこともあるので、時々上体を起こすか、座ったりすることも大事だ。
食後の口の中は細菌が繁殖しやすい。細菌がだ液の中に入って肺炎を引き起こすのを防ぐためには、歯を磨いたり、ヨード入りの含嗽(がんそう)剤でうがいをするのもよい方法だ。
肺炎の治療には数種類の抗菌剤を使い分ける必要がある。抗菌剤は細菌を死滅させる薬だが、細菌との相性があって効果がないこともある。3日程度飲んでも症状の改善がみられないときは、抗菌剤の処方変更が必要となるので、主治医に相談してもらいたい。