『第680話』 【骨粗しょう症】背中曲がると合併症も

高齢者の増加に伴い、背中が曲がってしまった人の割合も増えている。こうした背中や腰が曲がってしまった状態は、変形の仕方によって円背や亀背などに分けられる。本県は農業県だが、農作業は腰に負担がかかる。特に女性の高齢者では、骨粗しょう症が進行している上に農作業での負担が重なると、脊椎(せきつい)の椎体部分の圧迫骨折が起こり腰が曲がったままになってしまい、腰痛を訴える人も多い。

背中や腰が曲がると、どうしても腹部を圧迫した状態が続くことになる。そうすると、胸部も圧迫されることになるので呼吸換気不全が起こる。人によっては難治性のぜんそくや、原因不明の嗄声(させい)となることもある。消化器系では、イレウス(腸閉塞-ちょうへいそく)を起こしたり、便秘にもなりがちだ。このほか、発生率が高くなる疾病に逆流性食道炎がある。症状としでは胸焼けを訴えることが多い。

逆流性食道炎は胃部の圧迫によって、食道に胃酸やペプシンなどの消化液を含む胃液が逆流して、食道に炎症が起こる病態だ。さらに病態が進むと、胃の下部食道括約機構が働かなくなって食道への胃液の逆流が防止できなくなり、胃食道逆流症となっていく。この機構の働きを、降圧剤のカルシウム拮抗剤(きっこうざい)が低下させることがあるので注意が必要だ。

逆流性食道炎の治療には、H2ブロッカーやPPIといった胃酸を止める薬がよく効く。こうした薬には投与日数に制限があるが、背中や腰の曲がっている人は逆流性食道炎を起こしやすい体形なっているので、常用することになる。

背中や腰が曲がる原因にもなる骨粗しょう症の治療に、ビスフォスフォネート系の薬を使うことがある。この薬には上部消化管障害の副作用があるために、起床時などの空腹時にコップ1杯以上の水で服用し、その後30分間は横になってはいけないと服薬指導を受けているはずだ。逆流性食道炎を起こしやすい背中や腰が曲がった人は特に注意が必要で、処方しないこともある。

春が近づき、農作業の準備が始まる時期だ。将来、背中や腰が曲がらないように、骨粗しょう症を予防する食生活と適度な運動・日光浴を心掛け、農作業では腰に負担をかけない工夫をしてもらいたい。