『第679話』 【インフルエンザ治療】抗菌剤は二次感染対策

やっぱり、今年も流行を抑えられなかった。先月末からインフルエンザに罹患(りかん)した人が増え始めてきた。

厚生労働省は昨年10月、抗インフルエンザウイルス薬の供給見込みを公表した。それによると、A型・B型インフルエンザウイルス感染症に有効なリン酸オセルタミビルのカプセルとドライシロップが合わせて1,500万人分、ザナミビル水和物が28万人分となっている。A型インフルエンザウイルス感染症だけに有効な塩酸アマンタジンは、主に脳梗塞(こうそく)後遺症やパーキンソン症候群の治療に使用する医薬品なので、必要なときに随時供給する体制が取られている。

インフルエンザの治療には、これらの抗インフルエンザウイルス薬と、対症療法として解熱鎮痛剤のアセトアミノフェンや鎮咳(ちんがい)剤、去痰(きょたん)薬が処方される。ほとんどの症例で抗菌剤は処方されない。

一般に風邪といわれる上気道炎の原因の8~9割はライノウイルスやコロナウイルスなどのウイルスなのだが、以前は抗菌剤が一緒に処方されることがほとんどだった。

抗菌剤では、ウイルスを殺すことはできない。実は、肺炎などの二次感染予防対策として処方されてきたのだ。そうした状況に対して2年前、日本呼吸器学会は肺炎などに移行する症例は少なく、耐性菌を生み出す原因にもなるため、抗菌剤は慎重に使うべきであると提言している。しかし、困ったことに、いまだにインフルエンザや風邪になったら抗菌剤が処方されると思い込んでいる患者さんが多い。

以前、風邪は十分な休養を取れば三日で治ると本欄に書いたところ、読者から「風邪がひどくなって病院に行き、医師にしかられた」と苦情を受けたことがある。重要なのは「十分な休養」とは具体的にどのようなことかという情報を入手し、実行していくところにある。

まず、布団に入って体力と免疫力を温存して、十分な睡眠を取ること。消化の良い食べ慣れたものを食べ、ビタミン類と水分を十分に補給することも必要だ。部屋は適切な温度と湿度に保つ。感染が広まらないように、できれば家族全員がマスクを着用し、うがい薬を使ってうがいもして、寝具やタオルは共有しないようにする。こうした養生.と予防法で、風邪やインフルエンザの流行を乗り切ってもらいたい。