『第674話』 【ソルトペーパー】食塩摂取管理の目安に

ひところよりは少なくなったが、冬の食卓では塩蔵食品が目に付く。サケ、タラ、数の子などだ。そういえば、しょっつるもハタハタなどを原料にした塩蔵発酵食品だ。そして、当たり前のようにがっこが並ぶ。これでは、1日10グラム未満の食塩摂取量を守るのは難しい。

過去の日本人の食塩摂取量は、昭和11年以前は24.5グラムだったという研究がある。一方、同十年の本県の食塩消費量が34グラムだったとする報告がある。当時の県民の食生活の特徴から、みその多量摂取と食品の塩蔵習慣が背景にあったようだ。

では、現在はどうか?平成14年度の国民栄養調査では11.4グラムとなっている。それに対して本県は、同八年の「県民の健康と食生活に関する調査」によると13.9グラムとなっており、現在も全国平均を上回っている。

食塩は、ナトリウムイオンと塩素イオンの原子が1個ずつ結合した化合物だ。ナトリウムイオンは、常に水と一緒に動いていると考えていい。ナトリウムイオンの摂取で体内貯水量が増え、血液量が増えると脳血管、心機能、腎臓に負担がかかる。

それでは食塩の最低必要量はというと、食塩を全く摂取しない民族で1グラムというデータがあり、高血圧の人はいない。今や食塩摂取量と高血圧とは、関係があるというのが常識となっているようだ。しかし、高血圧の原因は高脂血症による動脈硬化、腎臓疾患や甲状腺機能亢進(こうしん)などの二次性疾患、あるいは遺伝的素因などもあり単純ではない。学会でも、いまだに議論されている。

食塩摂取量に敏感に反応する人としない人がいて、高血圧の人の約半数で減塩すると血圧が下がるといわれている。また、血圧が低ければ減塩しなくてよいというものではない。腎機能の老化予防のためにも減塩した方がよい。

食品中の塩分を調べるには、体温計のような塩分計がある。尿で調べることも可能だ。正確な検査方法ではないが、前日摂取した食塩のほとんどが尿中に出てくるので、尿を検査するソルトペーパーを使って定時に値を調べると、食塩摂取量を管理する目安として使える。こうした検査紙や検査機器は常時、薬局に置いてはいないので取り寄せることになる。

血圧が心配な人は血圧計だけでなく、こうした生活習慣を管理するための検査機器などについても、薬剤師に相談してもらいたい。