『第673話』 【感染性胃腸炎】薬なし、素早い対応必要

この季節、生ガキや加熱が十分でないシジミ、ハマグリなどの二枚貝を摂食し、下痢や嘔吐(おうと)に発熱、筋肉痛も伴っているという症状であれば、ノロウイルスによる食中毒が原因の急性胃腸炎が疑われる。このほか、ロタウイルスなどが、乳幼児や体力の低下した高齢者などに急性胃腸炎を引き起こす。発生時期は12~3月が多い。

こうしたウイルス性急性胃腸炎に治療薬はなく、水分の補給と整腸剤の投与を主とした対症療法しかない。感染症法が改正されて、ウイルスや細菌で起こる感染性胃腸炎は五類感染症として全国3,000カ所の医療機関で発生数が把握されている。

食中毒、伝染病とさまざまな言葉が使われるが、すべて感染症の一部だ。主に食品を介して感染するのが食中毒。伝染病は昔の伝染病予防法に規定されていたような、特に伝染力が強い感染症という意味合いで使われる。

ノロウイルスは、1968年に米国のオハイオ州ノーウォークの小学校で集団発生した胃腸炎が、72年にウイルスが原因であったことが判明して、ノーウォーク様ウイルスと呼ばれるようになった。その後、小型の球形ウイルスであることから、SRSV(小型球形ウイルス)と呼ぶようになる。しかし、SRSVには2種類あることが分かり、2002年8月の国際ウイルス学会で、それぞれサポウイルス、ノロウイルスと命名された。

ノロウイルスは培養細胞で増殖させることが難しいため、食品から検出することが困難。しかし、ふん便中に多く排せつされるので、これを用いて電子顕微鏡か遺伝子を検出する方法で確認する。

ノロウイルスは、感染単位として10~100個でも感染するといわれている。おむつに付着したふん便、嘔吐物によって病院内や福祉施設に感染が広まることもある。

手指に付くとドアノブなど、あらゆる所にウイルスが付着して感染が広がることになる。つめは短く切り、使い捨ての手袋を用いて汚物を処理し、うがいと手洗いを確実に行うことが必要だ。

食材は85度で1分以上加熱しないとウイルスを殺菌できないので、煮るなどして調理し、調理器具の取り扱いにも十分に気を付ける。症状が出たら速やかに受診して、素早い対応を図ることが必要だ。