『第672話』 【津波の塩害】井戸使えず伝染病懸念

先月26日、約1,000キロにわたる海底の断層が動いた。このインドネシア・スマトラ沖地震によって発生した津波で、過去経験したことがないほど多くの死者が出た。

津波により198人が奥尻島で犠牲になるなどした平成5年7月の北海道南西沖地震、本県などに津波被害を与えた昭和58年5月の日本海中部地震を思い出した人も多いことだろう。

現在、日本人であれば「地震=津波」と連想しない人はいないだろうが、日本海中部地震が発生した当時は日本海には津波が起こらないという迷信があった。スマトラ沖地震で被害に遭った人々は、地震に津波が伴うことさえ知らない人が多かったという。

このような災害時に一体、何が1番困るのか?それは飲み水の確保だろう。このたびの津波によって、ほとんどの井戸は塩害で使えなくなったという。モルディブ、アンダマン諸島、ニコバル諸島、スリランカなど発展途上国の上水道普及率は低い。

人体を構成する水分量は60~70%で、このうち10%が失われると失神やけいれんなどの脱水症状が現れ、20%に達すると生命が危うい。食べ物がなくても数週間は生き永らえることができるが、飲み水がなければ3~5日が限度といわれる。水分の供給が断たれることは致命傷になる。

さらに汚染された水は、さまざまな伝染病の感染源や感染経路になる。津波災害が起こった地域は常時、コレラや赤痢などの消化器系伝染病が発生している地域だ。これらの伝染病は水系伝染病といわれ、水を介して伝染する。食品や果実をこうした水で洗えば、かえって伝染病の原因になる。

海水を真水にする技術など、日本の浄水技術は世界に誇れる。さらに伝染病の予防対策と治療のほか、津波防災システムの構築などに関する知識と技術も今回、ぜひ役立ててもらいたいものだ。