『第669話』 【アトピー性皮膚炎】ビオチンで免疫整える

アトピー性皮膚炎は通常夏に軽快するが、冬に再発しやすく、冬を迎えるに当たって心配している人や保護者も多い。冬は室内が乾燥し、角質層にあるべき水分が蒸発してドライスキンになりやすい。ここに細菌やアレルギーを起こす原因物質が付着すると炎症が起こって、掻痒感(そうよう)が出てくる。これを防ぐためには、入浴後に保湿剤を使うことがポイントになる。

しかし、これは軽い人の話で、ギリシャ語で「奇妙な」を意味するatopiaという意味の語源の通り、なかなか完治せず、成人になっても悩んでいる人が多い。基本的には抗アレルギー剤を服用し、ステロイド軟こうなどを使って過剰な免疫反応を抑え、炎症を鎮める治療法を行う。

このほか、いくつかのアトピー治療法があるが、あまり知られていない治療法にビオチン内服療法がある。これはビオチンを服用してもらい、免疫力を整える治療法で、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)および掌蹠膿疱症性骨関節炎の治療にも応用されている。

免疫疾患のある人は、血中ビオチン濃度が低下していることが知られている。ビオチンとはビタミンB7、またはビタミンHともいわれるビタミンB群のビタミンだ。このHはドイツ語で皮膚を意味するHautに由来し、欠乏することにより皮膚炎や脱毛、うつなどの精神症状などが発症する。

生卵の白身だけを食べていると、卵白中糖タンパクのアビジンがビオチンと結合して吸収阻害を起こすことが分かっていて、ビオチン欠乏症になる。また、抗生物質などによって腸内細菌が乱されると、ビオチン血中濃度が低下する。このとき、整腸剤としてラクトバチルス類の乳酸菌製剤を使用するとビオチンを消費するので、ビオチン血中濃度が低下する。整腸剤としては、ビオチンを産生する活性酪酸菌製剤を使用した方が良い。また、ビタミンCはビオチンの吸収率を高める。

このほかにも、ある種の向精神薬を長期間服用しても血中ビオチン濃度が低下し、皮膚炎を発症することがある。

先天性代謝異常のときに使う治療用特殊ミルクを飲んでいる乳児のアトピー性皮膚炎の原因が、ビオチン欠乏によるものではないかという疑いから摂取が推奨されている。

ビオチンは腸内細菌を生み出しているので、通常ビオチン欠乏症になることはないが、血中のビオチンを維持するために、禁煙を実行し、安定した精神と消化器状態を保つことを心掛けた方が良い。