『第667話』 【結核】過去の感染症ではない

ツベルクリン反応(以下、ツ反)という言葉は、日本人にとって聞き慣れた言葉ではなかろうか。国民病とまでいわれている結核菌の代表的な抗原タンパク質のツベルクリンに対する抗体があるかを調べる検査だ。あえて「いわれていた」と過去形にしなかったのは、いまだに年間登録患者が30,000人を超えているからで、結核が決して過去の感染症ではないからだ。

1951年に制定された結核予防法が6月、五十数年ぶりに大改正され、来年4月から施行される。58年から学校保健法に基づいて実施してきた児童、生徒へのツ反は同法施行規則の改正により、既に昨年4月から廃止されている。その理由は、若年層の結核罹患者(けっかくりかんじゃ)が減ったからだ。2000年にツ反を実施した小学1年生は約1,168,000人で、そのうち結核患者だったのは4人、中学1年生も約1,285,000人のうち13人と効率が悪く、その役割を終えたといえる。

確実に結核を予防するのであれば、ツ反の代わりに6カ月までの乳幼児にBCGワクチンを接種してしまった方が良い。仮に、結核に感染している乳幼児にBCGワクチンを接種しても、安全なことが報告されている。

新登録患者は、60歳以上が約6割を占める。また、ハイリスク者として胃を切除した人、免疫力が低下する糖尿病患者、無理なダイエットや不規則な生活をしている人がいるので、こうした人々の結核検診は欠かせない。

治療はイソニコチン酸ヒドラジッド、リファンピシン、ピラジナミド、硫酸ストレプトマイシン、エタンブトールなど十種類ある抗結核薬を2、3剤併用する方法から、3、4剤併用を原則とした方法になり、確実に完治する。

しかし、問題なのはアルコール中毒者、ホームレス、1人暮らし、痴呆症など、さまざまな事情で抗結核薬を確実に服用できない人がいて、治療が中断してしまうケースがあることだ。そこで各保健所長や医師が指示し薬の服用を確認する直接服薬確認療法(DOTS=ドッツ)を盛り込んだのが、来年4月の改正の特徴だ。

このような患者さんでは、分割調剤といって長期間にわたって処方された薬を1週間ずつ調剤して服用を確認する。あるいは、現在でも行われている訪問薬剤管理指導のように患者さん宅にうかがって服用状況を確認し、併せて適切な生活指導を行っていくことが必要だ。