『第664話』 【風疹の予防接種】妊娠を望むなら検査を

インフルエンザなどは、ウイルス自体の変異や人の免疫が持続しないことがあって、毎年の接種が必要になる感染症だ。しかし、麻疹(ましん)や風疹(ふうしん)は、子どものころに予防接種すれば終生免疫が得られ、発症を防ぐことができると考えられていた。しかし、最近は麻疹や風疹で予防接種をしても発症が防げなかった事例が、国立感染症研究所から報告されている。

特に風疹は妊娠前期に感染すると、出生児に感音性難聴、白内障または緑内障、心疾患を三主徴とする先天性風疹症候群(CRS)という疾患が引き起こされる。CRSは妊娠中に感染しても必ず起こるわけではなく、妊娠月別の発生頻度は、妊娠1ヵ月が50%以上、2ヵ月が35%、3ヵ月が18%、4ヵ月は8%とされる。

CRSの発生は1999年には報告がなく、2000-2003年では各1例だった。しかし、本年は既に6例の報告があり、厚生労働省は9月に「風疹対策の強化」を呼び掛けている。

風疹が流行の兆しを見せている原因として94年の予防接種法改正で、ワクチン接種が義務規定から「接種することが望ましい」とする努力義務規定になり、ワクチン接種率が低下していること、それでも過去に比べ全体的な風疹患者が減ったため、ウイルスと接触する機会がなくなり、持続性感作による抗体価(免疫力)の維持ができなくなっていることが考えられている。

現状での対策は定期予防接種の勧奨強化、妊娠する可能性がある女性をはじめ、夫、子ども、同居人への予防接種勧奨がある。妊婦は予防接種を受けることができないので、注意が必要だ。

妊娠を希望しているのであれば、子どものころに予防接種をしていても風疹抗体価を検査した方が良い。抗体陽性にもかかわらず、誤って予防接種をしても大丈夫だ。むしろ抗体価が上がる。現在、2回接種が検討されている。

男性の場合、20代後半から30代では抗体がない割合が3割弱と非常に多い。妊娠中の健康管理は妊婦だけではなく夫や同居家族、周囲の人々も深くかかわっていることを忘れてはならない。