『第662話』 【ドライシロップ】水に溶かさず使用して

粉末ジュースを覚えているだろうか。駄菓子屋などで売られ、水に溶かすとイチゴ味やメロン味のサイダーになった。色も鮮やかで、そのままなめたりすると舌が赤や緑に染まったものだ。

そのイメージがあるのだろうか?苦味の強い成分を含む粉薬に甘みと風味を付けたドライシロップを水に無理やり溶かして、子どもに服用させることがあるようだ。確かに、そのような方法で服用することもあるが、ドライシロップは溶けにくいことが多く、また、容器に入れて強く振ると苦味が増す。もともとドライシロップにしてある理由は、そこにある。それは、薬の成分自体が苦いということだ。

通常、苦味が強い薬は、カプセル剤やフィルムコーティング錠にする。しかし、小児用の薬は体重などに合わせて服用量を調節したいので散薬(粉薬)を使いたい。

ドライシロップの多くは成分が抗生物質(特にマクロライド系抗生物質)で、小児用の風邪薬として処方することが多い。一緒に処方する鎮咳薬(ちんがいやく)や去痰薬(きょたんやく)も子どもが服用しやすいように液状のシロップ剤を処方するので、散薬とシロップ剤を別々にする調剤方法をとる。

しかし、数日間の処方の場合、医療機関側では服用するときの煩わしさを考慮して、シロップ剤に散薬を混ぜて渡すことがある。こうすると服用しやすくはなるが、時間がたつにつれて苦味が出てきて、さらに薬の成分も分解してくる。従って、別々に調剤する方が正式な調剤方法だ。

赤ちゃんや子どもは苦い薬を嫌がるが、少量のアイスクリームやシャーベットに混ぜて与えると意外に簡単に飲んでくれる。それは、甘さと冷たさで苦味が薄れるからだ。あるいは少量のジャムや砂糖水に混ぜる、すりつぶしたバナナに混ぜる、といった方法がある。しかし、アイスクリームや砂糖水を多量に使うと飲み残しが出てしまうことがあるので、この辺の調節を見極める必要がある。

このほかの方法として、1回服用量のドライシロップを少量の水やさゆで練って、乳幼児の上あごやほっぺたの内側に塗り付けて飲ませる方法がある。保護者にとって、乳幼児に薬をうまく飲ませるのは一苦労だ。薬剤師に相談して、こつを得ておくことをお勧めする。