『第661話』 【長期処方】体調変化によく注意を

 

薬の長期処方が認められるようになったことから、3ヵ月あるいは半年分などの薬を受け取ることが可能になった。おかげで病院に行く回数が減り、長い待ち時間から解放されたり、会社を休む必要がなくなるなどメリットを感じている人も多いだろう。

長期処方が可能な人は、薬を服用することで病態が安定し、服用中の薬による副作用の発現についても発生の度合いや程度が分かっている場合が多い。しかし中には、こうした状況ではない場合でも長期処方となってしまう場合がある。本来であれば短期間の投与で定期的に血液検査を行い、肝機能や腎機能に何らかの影響を与えていないか確認した上で、長期処方にしてもらいたいと、患者さんと会話していて思うことがある。

特に高血庄や高脂血症、糖尿病などは自覚症状があまりなく、しかも長く薬と付き合っていかなくてはならない病気だ。これらの薬が長期処方されることで病院と疎遠になり、病気に対する危機感が薄れたり、テレビやインターネットの情報を自分なりに解釈して、勝手に薬を中止したりすることのないようにしたいものだ。

特に高齢者は、長期処方は向いていない。確かに、病院に何度も通うのは大変だ。医療費もかかり増しになる。しかし、血圧や血糖値が安定していればいいというものではない。高齢者はこれらの疾患のほかに腰や関節の痛みがあり、骨量の減少、白内障やがんの心配もある。また内臓の衰えから薬の代謝、排せつが鈍くなり、薬が効き過ぎてしまうこともあるからだ。

こうした場合、住み慣れた地域にいる医師を「かかりつけ医」として決めておくとよい。食生活のほか、家族、社会とのかかわり合いなど生活環境も重視すべきで、痴呆症状の初期などは家族の情報も役立つ。こまめに診察しているので健康状態の把握が可能となり、体調に変化があるときは専門医や病院に連絡をしてくれる。医師に遠慮があるときは、「かかりつけ薬局」で相談するのもよい。薬局側から医師に連絡して、処方の変更や薬の量を調整してもらうこともできる。

また、高齢者は平熱を知っておくようにしよう。微熱が出たら脱水症や感染症を疑って、まず水分補給。それから尿が濁っていないか、尿の色に変化がないかなどを確認して体調の変化を早く発見できるよう心掛けておくことが、長期処方の場合は重要だ。