『第657話』 【自然食品】「危険性」に注意が必要

自然食品という言葉は、健康に良い食品、天然色素というと安全で安心というイメージを思い起こさせるようだ。しかし、実際はギンナンを食べ過ぎれば中毒を起こし、漆の樹脂に接触すればかぶれる。また、便秘薬となるセンナは流産を誘発するので、自然のものだから良いというわけにはいかない。センナ茶はセンナの茎が原料で薬用となる葉の部分は含まれていないが、薬事法に違反して葉を含むものが多く流通しているので、やはり妊婦は控えた方が無難だ。

 こうしたこともあって厚生労働省では、食品安全情報をインターネットで提供している。また、いわゆる危険な健康食品は食品衛生法によって販売が禁止されている。

 今年6月、シンフィツム(コンフリー)およびこれを含む食品の販売が禁止となった。この措置は閉塞(へいそく)性細気管支炎の発症事例によって、昨年9月に「サウロパス・アンドロジナス(アマメシバ)を含む粉末剤、錠剤等の剤型の加工食品の販売禁止」が出されたのに次いで2例目だ。

 また、セイヨウアカネの根から抽出するアカネ色素の安全性についても、ラットによる実験で腎臓の尿細管にがんの発生が見られたことから、食品健康影響評価が行われている。現状では、人への健康被害の報告がないことから使用禁止の措置までには至っていないが、使用や摂取を控えた方がよいと警告している。

 シンフィツムは和名をヒレハリソウ(鰭玻璃草)という。シンフィツムの学名は、傷口がふさがるという意味のギリシア語のシンフィトンからきている。イギリスの植物学者ヘンリー・ダブルデーがさまざまな薬効を発表したため、昭和40年代に長寿の効果がある「奇跡の牧草」としてブームが起こったことがある。

 確かに有機ゲルマニウムの含有量が多く、ビタミンB群、鉄、カルシウムなど多くの栄養素を含んでいる。このため販売禁止になったとはいえ、インターネットなどを利用した通信販売が後を絶たず注意が必要だ。シンフィツムは、こうした栄養素のほかにピロリジンアルカロイドを含んでいて、これが肝臓の静脈を閉塞させて急性肝障害を引き起こす。

 「安心と安全」が食品や医薬品のキーワードとなった今、自然食品についても情報を収集しておく必要がある。