『第656話』 【オリブ油】古来、日焼け止めに使用

アテネ五輪で、体操男子団体が金メダルを獲得した。1976年モントリオール五輪以来、28年ぶりに栄冠を勝ち取った選手たちの演技に目を奪われた。表彰式では、金メダルとともに冠が頭上に載せられた。これを見て、今回のオリンピックはアテネでの開催だったことを再認識した。それはオリーブの葉の冠だったからだ。

古代オリンピックは、オリンピアで開催するギリシャの主神ゼウスにささげる祭典競技で、勝者にはオリーブの冠を贈った。このほか、四大祭典としてアポロンの聖地で開催されたピュティア祭では月桂樹(げっけい)を、海神ポセイドンにささげるイストミア祭とゼウスを主神としたネメア祭では、野生のセロリの冠を載せた。

オリーブは紀元前3000年ごろシリアで栽培が始まったといわれ、日本には文久年間(1861-64年)にイタリアから輸入されたようだ。明治41(1908)年以来、香川県小豆島で栽培されていて、良質のオリーブ油が採れる。

オリーブはオリブ油の名称で、日本薬局方に収載されている医薬品だ。薬効としては局所保護薬だが、貼付剤(ちょうふ)や軟こう剤の製剤原料として使われる。身近なものに、海岸などに持っていくサンスクリーンがある。オリブ油に含まれる脂肪酸はオレイン酸を62-83%、リノール酸を3-17%含み、これらの不飽和脂肪酸が紫外線を吸収するために、昔から日焼け止めとして使われてきた。

現在では、構造式からベンゾフェノン誘導体、パラアミノ安息香酸誘導体、パラメトキシ桂皮酸誘導体、サリチル酸誘導体などの成分を、その紫外線吸収特性を考えて混合し、サンケア化粧品として使っている。

旧約聖書創世記に、トルコのアララト山にたどり着いたノアの箱舟の記述がある。ノアは水が引いたのかを確かめるためにハトを放つ。やがて、ハトは新しいオリーブの枝葉をくわえて帰ってきた。ノアは、これによって水が引いたことを知った。そして、オリーブをくわえたハトが「平和の象徴」となった。また、イスラム教のコーランには、神が人間のためにつくった植物。として特筆されている。

オリンピックが、永遠に「平和の象徴」として続くことを願いたい。