『第654話』 【C型肝炎】併用療法で治癒率向上

1897年に制定された伝染病予防法は、1999年4月施行の「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(通称・感染症法)で大きく変わった。

その後、SARS(新型肺炎)、ウエストナイル熱、鳥インフルエンザが流行。さらに発症すれば必ず死に至る狂犬病が、ペットとして違法輸入される動物によって持ち込まれるのではないかといった心配もあって、昨年11月には改正感染症法が施行された。感染症分類の見直しなどが行われたが、そのほとんどはウイルスが原因のものだ。

細菌による感染症は、10年に秦佐八郎とパウル・エールリッヒが「救う」という意味で名付けた抗菌剤のサルバルサンを発見。そして28年のアレキサンダー・フレミングによるペニシリンの発見から始まる抗生物質の登場によって、ほぼ治療が可能な時代となった。

しかし、冒頭のSARSやウエストナイル熱に代表されるウイルスに、ダメージを与える薬の開発は非常に困難だ。ようやく70年代ごろから、DNAや

に似せた核酸を合成することができるようになり、その研究過程で核酸合成の仕組みが解明されるとともに、ウイルスの核酸合成を阻止する物質も見つかってきた。

72年、その一つとしてリバビリンという物質が合成された。麻疹(ましん)、インフルエンザ、エイズ、C型肝炎ウイルスといった患者へ単独投与したが、その治療成績は良くなかった。同時期にインターフェロンによる臨床試験が始まったが、これも一時的な効果しか得られなかった。この両者の併用療法が試みられたのは93年ごろのことだ。

C型肝炎ウイルスには、いくつかの分類方法がある。日本でよく使われる分類法では、日本人の約75%がⅡ型(Ⅰb型)で治りにくい。しかし、ウイルス量の多い人でも併用療法によって、3%の治癒率が20%まで上がっている。Ⅲ型(2a型)では、より治癒率が高く75%が完治する。

インターフェロンもさらに改良が進み、効果が高いコンセンサスインターフェロンや効果が長続きするペグインターフェロンが認可された。C型肝炎のタイプ別治療法が確立されてきている。

ただし、治療には副作用が伴う。副作用を最小限にとどめるためには、しっかりと治療計画を理解し、医師側とともにC型肝炎ウイルスと闘う姿勢が大切だ。