『第652話』 【アレルゲン】キット使いダニ測定を

梅雨も終わりに近づいているが、ダニにとっては繁殖の最盛期を迎えている。昔の日本家屋は紙と木で造られていると偏見を込めてやゆされたが、通気性が良く、ダニを食べてくれるクモ類もすみ着いていて、生態系のバランスは取れていた。

最近の住宅は、密閉性も高くなって高温多湿になりがちで、室内にはダニのえさになるたっぷりと蒸し上がったふけ、あかがたくさんあり、絶好のすみかとなっている。

アトピーやぜんそくの原因となるのは、生きているダニだけではない。むしろ、死がい、ふんで起こることの方が多い。アレルギーを引き起こす原因物質をアレルゲンという。特にダニが原因となるのは身近に多く生息していて、その量が多いためだ。

アレルゲンは、分子量1万以上のタンパクアレルゲンと5千以下のハプテンアレルゲンに大別する。ハプテンアレルゲンは、ほかのタンパク質と結合して大きな分子量になってアレルゲンとして人に作用する。

一方、人が非自己であるものを認識し、排除するシステムを免疫といい、感染症などから人体を防御する重要な役割を担っている。異物の侵入を監視しているマクロファージやヘルパーT細胞が異物の侵人を察知すると、インターロイキンやサイトカインという物質を放出して、ほかの免疫細胞に情報伝達する。情報を受け取ったB細胞は免疫グロブリン(Ig)を生産し、異物と反応して排除する。

Igには、構造と働きの異なるIgM、IgG、IgA、IgEがある。花粉症やダニアレルギーのようにアレルゲンの侵入後、すぐに症状が起こるアレルギーをI型(即時型)アレルギーといい、アレルギー体質の人はIgEの量が通常の人より多い。

今は、特異モノクロナール抗体を使ったダニアレルゲンそのものを直接測定するキットが出ている。ダニアレルギーではないかと思っている人がいたら、こうしたもので室内を測定してみるとよい。