『第651話』 【医薬品安全対策】誤用防止、ようやく緒に

厚生労働省から、国内外の副作用症例などの情報をまとめた「医薬品・医療用具等安全性情報」が発刊されている。これは1973年4月から「医薬品副作用情報(1-143号)」として、不定期で発刊されたのが始まり。97年9月から99年11月までは「医薬品等安全性情報(144-157号)」と名称を変更して、隔月を原則に発刊されていた。2000年1月以降に「医薬品・医療用具等安全性情報(158号-)」に変わり、月刊となった。

今年6月に発刊された202号の内容で特に注目したいのは、「取り違えることによるリスクの高い医薬品に関する安全対策について」という項目だ。具体的な医薬品商品名を挙げて、その改善が図られた事例を初めて紹介している。

医療の現場では、医療事故を防止することが大きな課題となっている。同姓同名患者の取り違えや「注射禁」と書かれている薬を注射してしまう例に見られるように、どんなに注意しても時に人はミスを犯してしまう。

医療用の医薬品は13,000種類もある。そして、あまりに似通った商品名が多く存在している。さらに投与量を調節するため、ほとんどの商品に25ミリグラム錠や50ミリグラム錠のように成分量が異なるものがあり、こうした名称や量を明確に区別して間違いを防ぐ対策は、各製薬会社が自社商品名を変えたがらないことなどもあって進んでいるとは言い難い。

過去の事例から間違いによって繰り返し重大な被害が生じた医薬品は、ある程度限られている。同省の医薬品類似性検討ワーキンググループで議論され、ようやく一部が改善されたが、その事例は次のようなものだ。

アマリール(糖尿病用剤)とアルマール(不整脈用剤)には薬効が明記された。ウテメリン(切迫流・早産治療薬)とメテナリン(子宮収縮刺激剤)は薬理作用が全く正反対の薬で、これまで以上に薬効および薬品名が大きく表示された。不整脈治療に使う点滴用キシロカイン10%製剤と静注用キシロカイン2%製剤では、10%製剤は使用前に希釈して使用する製剤であり、静注製剤ではないことを明示した。

こうした改善は緒に就いたばかりだ。医療事故ゼロを目指してより積極的に取り組み、改善報告が増えることを期待したい。