『第646話』 【薬学教育】倫理観と経験も不可欠

平成18年4月に入学する薬学部の学生から、6年間の教育を受けることが確実となった。そして薬剤師国家試験も薬学に関する6年の教育を履修し、この間に調剤などの実務に関する実習を履修した者に受験資格が与えられる。

大学の履修年限は、学校教育法第五十五条に規定がある。この第二項に「医学、歯学又は獣医学を履修する課程については、(中略)その修業年限は、六年とする」とあり、これに薬学が加わる。一方、薬剤師国家試験の受験資格は薬剤師法第十五条に規定があり、大学で薬学の正規の過程を修めた者に与えられる。

日本薬剤師会は、薬学教育年限を6年とすることを熱望してきた。議論を重ね、昭和55年から約25年間にわたる厚生労働省並びに文部科学省への働きかけによって、やっと理解が得られたという思いだ。

しかし、重要なのは薬学の教育を充実させる意義と公益性について、自らの行動をもって、さらに県民の理解を得ていくことだ。それは、すべての国家資格は有資格者個人のためにあるのでなく、国民、県民のためにあるからだ。

過去の薬害を振り返ると、サリドマイドの催奇性で1200人が出生し、309人を患者に認定。ピリン系アンプルかぜ薬では38人がショック死し、販売を中止した。整腸剤キノホルムはスモン病の発生によって販売中止になった。これらはOTC薬(大衆薬)で発生した薬害だ。

その後も薬害エイズ、抗がん剤と帯状疱疹(ほうしん)治療薬のソリブジンとの併用による患者の死亡、風邪薬による間質性肺炎の発生などがあって、薬の服用状況とともに副作用が発生していないか、しっかりと観察していく必要があると問われてきた。

そのためには薬学的な知識だけでなく、医療人として薬剤師倫理を身に付け、臨床経験を重ねていくことが重要な課題となっている。

疾病治療には外科的処置や機能回復訓練のようにあまり薬を必要としない治療法もあるが、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を含め、ほとんどの疾病は、医師の的確な診断・治療計画の決定とともに、薬の適正な使用が治療に当たっての車の両輪になる。

薬学教育6年制にご理解をいただくとともに、県内の高校生を対象に来月13日午後2時から秋田市の県総合保健センターで開く「薬学部進学説明会」に多くの生徒が参加し、薬学の世界に興味を抱いてくれることを望んでいる。