『第638話』 【脳梗塞】前ぶれがあれば受診を

 薬局窓口では、脳梗塞(のうこうそく)に関する質問が増えている。長嶋茂雄さんが発症して以来、この病気に関する内容がテレビや新聞などで増えているためだろう。n 脳の血管が破れるのは脳出血、脳の血管が詰まるのは脳梗塞。二つを合わせて脳卒中という。本県を筆頭に日本は圧倒的に脳出血が多かった。それは高血圧を予防する対策がとられてこなかったためだが、今は検診の成果が上がり、降圧剤で若いうちから高血圧を治療している人が増えたので、減少傾向にある。n 代わって脳梗塞が増えている。脳梗塞になる大きな原因のひとつは動脈硬化だ。動脈硬化を進めるものは糖尿病や高脂血症だ。血糖値が高い人、コレステロールや中性脂肪が高い人はそのままにしておいてはいけない。n もうひとつの原因は不整脈などの心臓病だ。不整脈の中でも「心房細動」と呼ばれる症状が起きると心臓の内側に血栓(血液の塊)ができやすくなる。この血の塊が血流にのって一気に脳に運ばれ、細くなっている脳の血管に詰まってしまう。最近の脳梗塞はこのタイプが増えている。n 心房細動は心房の拍動が不規則になる頻脈の状態だが、心房細動を起こしたことがある人は、ワルファリンカリウムをはじめとする血栓予防薬を欠かしてはならない。ワルファリンカリウムを服用中は納豆を食べてはいけない。効果がなくなるからだ。n ほかに血栓予防には、少量、のアスピリンも使われる。薬の商品名が似ているので、こちらも納豆がだめだと信じている人がいるが、アスピリンは納豆を食べても差し支えない。n 脳梗塞の場合、脳出血と違って痛みがない。まひが起こることもあるが軽いことが多く、しばらく様子を見ていたり、飲酒中に起きた場合は酔っているからなどと放置されて受診が遅れがちになる。しかし▽手足の脱力感やしびれ▽物が二つに見える▽食べ物がうまく飲み込めない▽言葉が出てこない-などの前ぶれ症状があるので、このようなことの一つでもあれば直ちに受診する。n 心臓病は薬でもなかなかうまくコントロールできない人が多い。心電図をとれば、心房細動があるかどうかが分かるし、心臓の超音波検査をすれば心臓内に血栓があるかどうかも分かる。必ず循環器の専門医に管理してもらうようにしたい。n