『第635話』 【鳥インフルエンザ】感染経路の特定が重要

 鳥インフルエンザが山口県に続いて大分県で発生した。これが養鶏場ではなく、ペットとして民家で飼われていたチャボだったため、学校などで教育目的で飼育している鳥類の管理問題へと発展しているようだ。n 当センターにも学校薬剤師会から詳細資料を求められ、報告している。また、県民からは市販の鶏糞(けいふん)肥料から感染することはないか?といった問い合わせもある。n 鶏糞肥料は、新鮮鶏糞からではなく、いったん有用な細菌で発酵させている。これを同様に処理した牛糞などと混合して肥料にする。このため、病原性の細菌類やウイルスは、この発酵過程で死滅し、鶏糞肥料でウイルスに感染することはない。n ウイルスは、リボソームを持っていない。リボソームは、タンパク質を合成する合成工場だ。人の細胞は遺伝子情報(DNA)をこのリボソームに読み取らせて、その配列どおりにアミノ酸を並べて結合させて、タンパク質を作る。このタンパク質は、言い換えると各種の酵素と思ってもらっていい。n ウイルスは遺伝子情報だけを持つ生命体で、自己増殖のためには、動物や植物が持っているリボソームを借りて、自己のタンパク質を合成して増殖する。従って、細胞外では存在し得ても増殖することはできない。鳥インフルエンザウイルスは、細胞外であれば、数日間で死滅する。これは局限的に感染を防げれば、感染の拡大を防ぐことができることを示している。n 鳥インフルエンザウイルスは、消毒剤に対する抵抗性が弱いので、鶏舎などの消毒は逆性石けん(塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウム)でできる。n ただし、消毒をしても予防効果はない。ニュース映像では生石灰がまかれるシーンが映るために、感染も発病もしていないのに、消毒をしなければならないと勘違いする人がいるようだ。感染地以外であれば、飼っている鳥の健康観察を行い、むしろ感染経路を断つことが重要で、▽野鳥が入らないように防鳥ネットで覆う▽鶏糞などの移動を最小限にする▽鶏舎や養鶏場などへの立ち入りの自粛▽餌を替えるなど管理のために立ち入った場合の履物や衣服の管理を徹底する、といった対応策を図った方が良い。n 心配なのは感染経路で、どこからやって来たのか?渡り鳥なのか?これを特定することが今後の最重要課題だ。n