『第632話』 【医療安全支援センター】調剤事故の疑い 相談を
人には、どのくらいの危機回避予見能力があるのだろうか?n 昨年2月までの1年間に県内で発行された総処方せん枚数は約826万枚だ。処方せん1枚には、数種類(剤数)の処方が記載されているので、これを3倍程度した回数の調剤行為が行われたことになる。n 一方、服用した患者さんに体調変化が起こるなどした調剤事故は、平成12年度7件、13年度5件、14年度4件、15年度はまだ途中だが1件となっている。この結果を見ると、12年度から本会内に調剤過誤防止委員会を設置して、毎年、調剤事故防止のための講習会を義務付けてきた結果が現れていると考えている。n 薬剤師は、薬剤師法24条で、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師、獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならないと、疑義照会が義務付けられている。n 処方内容の確認が行われた件数は、県医務薬事課が毎年10月に調査している。14年度では、処方せん753,640枚中13,300枚、1.76%だった。実は、真の医薬分業の利点がここにある。それは再確認ということだ。薬が早くお渡しできますとか、薬の説明がしてもらえますという言い方は間違ってはいないが、医薬分業の本質論ではない。n 疑義照会が適切に行える環境を整えるために、「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則」および「保険医療機関及び保険医療担当規則」が定まっていて、処方医が特定の保険薬局に誘導することを禁止し、薬局にも保険医療機関と一体的な構造、運営や財産上の利益供与を厳禁している。その理由は、薬物治療における患者さんの安全性と有効性を最優先しているからにほかならない。n 調剤事故を防ぐためには、いくつもの工夫をしている。薬剤師が、処方せんと患者さんの服用歴を書いた薬歴を見比べながら一つ一つの薬を説明し、これを薬袋に入れるようにして最終確認をするのもその一つ。さらに、「おくすり手帳」を渡し、情報公開して、後で患者さん自身で確認できるようにもしている。n それでも、調剤事故は起こりませんとは言い難い。心配事があれば、本会並びに今年から設置された県医療安全支援センター(電話018-860-1414)への相談をお願いしたい。n