『第628話』 【今年の薬業界の話題】安全と利便のはざまで

 医薬品は安全なものなのか危険なのか?安全なものもあるだろう。医薬部外品ならどうだ。規制されていない健康食品でも危ないものはある。一方では、24時間開いているのはコンビニしかない。夜間休日の医薬品供給に利便性を高めろ、といった議論が年末に展開されていた。n 医薬品に関する安全性の確保と利便性の向上、これは永遠の課題なのかもしれない。専門的な知識を持ち得る人であれば、このたびの医薬品から医薬部外品に移行する15製品群約350品目を適正に使っていただけると思う。問題なのは、健康欄など読んだことが無く、全く興味も知識もない、販売する側にも情報がないといった状況にある人だ。医薬品の安全性と有効性は絶対的なものではなく、個人の知識レベルが影響する相対的なものだ。それ故に、「百薬一話」を書く意味があると思っている。n 薬剤師法に、薬剤師は医療用医薬品を供給したときには情報提供をしなければならないという義務規定がある。単なる化学物質を薬として使っていくためには、医薬品情報の提供が必要不可欠だからだ。n 利便性に関しても、薬が入手できれば良いという単純な話ではない。頭痛や生理痛に使っていたアスピリン製剤を痛み止めだからと、腹痛に使えば胃出血を起こして重大事になりかねない。少なくとも緊急連絡先を明示する必要性があることから、薬局・薬店では、ポスターと与薬カウンターで緊急連絡先をお知らせしている。n 総合規制改革会議は、規制緩和で医薬品市場を拡大しようと考えた。しかし、平成11年に行われたドリンク剤などの医薬品部外移行では、薬局・薬店での販売高は激減したが、全体的な販売量は横ばい状態となっていることが理解されていない。それよりも医薬品市場は拡大すべきものではない。予防医学を充実させて、薬を使わなくても良い社会に育てていくことが必要だ。n そのような理解があって、44都道府県議会、50市町村議会で「医薬品の一般小売店における販売」に対する意見書が採択された。この重みは大きい。薬剤師の責任も重大だ。来年には、いよいよ薬剤師教育の年限延長が国会で審議され、早ければ平成19年度の入学生から6年制に移行する。n 今年は、国民の健康をどう守っていくのか、真摯(しんし)に考えさせられた年となった。その具体策を新年を迎えるにあたっての課題としたい。n