『第625話』 【糖尿病の克服】叱咤激励し生活改善を

 1度きりの人生ならば「食べたいものは我慢せずに、食べたいだけ食べて暮らす」か、「腹8分目、健康で元気に長生き」が良いかと、人生は迷いの中にあることを証明しているかのように、その時ごとに右往左往する。n 平成14年度の糖尿病実態調査によると、糖尿病の診断名がまだつかない予備軍を含め、糖尿病の疑いがある人は成人の6.3人に1人になっている。n 糖尿病の疑いのある人の多くは肥満傾向にある。太っているとインシュリンが出にくくなる。インシュリンは血液中のブドウ糖の濃度、すなわち血糖値を下げる唯一のホルモンだ。これが出にくくなると、血管の中は常に高血糖、いわゆる砂糖漬けのような状態が続き、血管が詰まりやすくなって、やがて血管に障害を与える。n 特に細い血管の集まっている目の網膜、腎臓の糸球体(しきゅうたい)などは真っ先に障害を受ける。これが失明や人工透析へと進んでいく始まりとなる。n 糖尿病を早い段階で食い止めないと、さまざまな合併症が起こる、結果的に糖尿病による死因の3分の1は、心臓の血管が詰まる心筋梗塞(しんきんこうそく)などの虚血性心疾患だ。n 糖尿病予備軍の人は定期的な健康診断が欠かせない。n 健康診断の2、3日前から食事を控えて血糖値を下げるささやかな努力は、ヘモグロビンA1cという数値で見抜かれる。なぜならヘモグロビンA1c値で、およそ過去2カ月間の平均血糖値が分かるからだ。n この値の基準値は4.3~5.8%未満。ただしこれを超えたからといってすぐに糖尿病の症状が出てくるわけではない。空腹時血糖が110ミリグラム/dl未満で、ヘモグロビンA1cが6.5%未満であれば合併症の発症や進行は食い止められるとされている。n 糖尿病は初めは自覚症状がない。血糖値が日ごろから高い人は自分で時々測ってみる必要がある。血糖値の自己測定器は市販されているが、必ず医師の指導を受けてから購入してもらいたい。n インシュリンの働きを鈍くするものに喫煙、飲酒、ストレスがある。体重を落とすこと、アルコールを減らすこと、運動をすることなどは楽ではない、むしろ苦しい。それでも自分を叱咤(しった)激励しながら本気で取り組む必要があるのが糖尿病だ。n