『第623話』 【鼻詰まりと風味障害】ステロイド併用が有効

オレンジジュースなど数種類のジュースを用意し、目隠しをして、鼻をつまんで飲み、何のジュースか当てるゲームがある。実際にやってみるとこれが当たらない。それほど嗅覚(きゅうかく)は重要だ。

風邪やインフルエンザにかかると食べ物がおいしく感じられないという人の多くは、においを感じる嗅粘膜がウイルスによって直接障害を受け、においを感じられなくなっていることがある。その結果として、味にまで影響を受ける風味障害が生じる。

鼻から入ってきたにおいの分子は、鼻の奥にある薄い粘膜の一部の嗅粘膜に付着する。嗅粘膜はにおいの感知器で、この刺激が大脳のにおい中枢に伝えられて、においを特定する。鼻詰まりや鼻水はこの感知器にバリアー(障壁)を張って、においを感じさせなくする。

慢性副鼻腔炎(蓄膿症)は鼻の奥にある鼻腔が細菌によって侵され、炎症が起こり、それが副鼻腔にまで及んでその中にうみがたまる病気だ。こうなると常に鼻詰まり状態が続き、においを感じることができない。アレルギー性鼻炎も同様だ。

バラの香り、カラメルの焦げたにおい、汗のにおいの3種類を8段階の濃度に分け、スプレーで鼻腔に吹き付ける検査がある。どの濃度の段階でにおいを感じるかを調べると嗅覚障害の程度が分かる。

副鼻腔炎には抗生物質、アレルギー性鼻炎であれば抗アレルギー剤を使う。風邪やインフルエンザのウイルスにより、直接嗅神経が障害を受けた場合は神経の再生を促すビタミンB12剤などを使用する。

これらと並行してステロイド剤の点鼻を毎日行うことも有効だ。ステロイドは粘膜の炎症を抑える効果が高く、約3~6カ月くらい続けると嗅覚が戻ってくる。点鼻では、ごくわずかなステロイドを局所に使用するため、全身的な副作用を起こすことが少ない。

ステロイドを有効に効かせるために、点鼻方法にコツがいる。まず鼻をよく通してからでないと効果が薄れる。鼻をかみ、できれば熱い蒸しタオルを鼻に当てスッとしたところで仰向けになる。枕を肩の下に入れて頭を後ろに反らした状態で鼻の中に1、2滴垂らし、2、3分じっとする。

副鼻腔炎は風邪をきっかけに起こる。外出から帰ったら手洗い、うがいを習慣化し、風邪の予防を心掛けよう。