『第618話』 【国体でドーピング検査導入】大衆薬で「うっかり」も

第58回国民体育大会(わかふじ国体)夏季大会が先月、静岡県で開催された。秋季大会は今月の25~30日にかけて開催される。

唐突に、国民体育大会の話題で、薬の話と何の関係があるの?と首をかしげる人もいると思う。

話題提供の理由は、今年の国民体育大会が、薬学の世界にとって記念すべき大会となっているからだ。それは、初めて国民体育大会にドーピング検査が導入されたということだ。今大会以降は、世界規定に従ったドーピング検査が実施される。

ドーピングとは薬物などによって、持続的あるいは短時間的に競技する選手や競走馬などの運動能力を高めることをいう。公平性を欠くばかりではなく、選手に危害を与え、危険な行為である。

元々、武士道などの古来からの精神論がスポーツの世界で常識化している日本では、ドーピングといった行為は、恥ずべきものとして関心が薄かった。しかし、こうした精神論が薄れ、諸外国から密輸される覚せい剤などによる薬物乱用問題、根拠を持たないさまざまなサプリメント情報など、スポーツ競技選手を取り巻く環境が変わってきた。ある意味では、悲しいことだが、こうしたことや世界基準に合わせた国民体育大会としていくため、ドーピング検査の導入が必要だ。

問題なのは、「うっかりドーピング」だ。知らないで服用したOTC薬(大衆薬)でドーピングと認定されてしまう可能性があるからだ。また、疾病治療中の薬物であっても違反になることがある。しかし、OTC薬を求めに薬局・薬店に来るということは、何らかの疾病症状があるからで、ドーピング違反にならない別の薬を紹介する、あるいは、症状によって薬を販売するのではなく、専門医を紹介するなどの必要が出てくる。こうしたことも薬剤師の手を経ないで、一般小売店で医薬品を販売しようとする規制緩和に反対している理由だ。

すでに、静岡県薬剤師会では、「薬局におけるアンチ・ドーピングガイドブック」を作成して、全薬局・薬店に配布済だ。

平成19年、第62回国民体育大会「秋田わか杉国体-君のハートよ位置につけ-」も近づいてきた。秋田県薬剤師会もアンチ・ドーピング対策を検討している。