『第616話』 【食薬分類】「口にする物」安全確保を

国民は今、食品に限らず「口にする物の安全性」をいかにして確保するのか、という大きな課題を突きつけられている。

少なくともこうした課題を解決するためには、応分の費用を国民が負担しなければならないという現実的な問題も内在する。そして、国民が負担しなくてもいいように生産、流通コストの削減で吸収しようとする努力が続けられでいる。

一方で、医薬品を一般小売店で販売しようとする規制緩和は、適正に使用すべき医薬品の区分を不明りょうにしてしまう恐れがある。

病原細菌が身体に進入するところを進入門戸という。口は消化器系、呼吸器系感染症の最も代表的な進入門戸だ。また、フグ毒や毒キノコなどのさまざまな毒物で中毒や障害が起こる進入門戸でもある。そうした意味で、「口にする物の安全性」は絶対に確保する必要がある。

風邪薬などの成分にカフェインが使われる。同様にコーヒーや抹茶類にも30~120ミリグラムのカフェインが含まれている。それほどたくさんコーヒーを飲む人はいないと思うが、連日10杯も飲めば危険なし好品になってしまう。

センナもよくセンナ茶として売られているが、正確には「センナ茎茶」で、葉は使っていない。センナ葉に含まれる主成分はセンノシドだ。この成分は緩下剤で、医薬品だ。時々センナ茎茶中にセンナ葉が混入していて、薬事法違反で摘発されることがある。その理由は、センノシドを妊婦が使用すると子宮が充血して早産を起こす可能性があり、危険だからだ。便秘薬と簡単に言うが選び方を間違えれば危ない。

このように食品と医薬品を区分することを専門用語で食薬分類と言い、非常に細かく分類されている。センナであれば、茎は食品、葉は医薬品といった具合だ。

8月18日付に、健康被害=閉塞(へいそく)性細気管支炎=を起こしたアマメシバの加工食品を紹介した。これは9月12日、食品衛生法により、「粉末剤・錠剤等」の通常方法と著しく異なる方法で大量摂取を可能にするものが販売禁止になった。ただし、生鮮食品としてのアマメシバや微量に含む粉末などの剤型までは禁止していない。

現状では、健康食品の正確な情報が不足している。くれぐれも甘い話には乗らないよう、一度疑ってから、確認して使用すべきだ。