『第613話』 【医薬品を安全に使うには】薬剤師への相談が重要
今年は天候が悪く、冷夏となっている。そのためか、例年に比べて風邪をひく人が多いようだ。
風邪薬の中には鼻水、鼻づまりなどの症状を緩和することを目的に、塩酸フェニルプロパノールアミン(PPA)を配合しているものがある。この成分を含有する大衆薬(OTC薬)の風邪薬は169種類ある。医療用の医薬品は1種類のみだ。
かつて米国では、この成分を食欲抑制剤として承認していたため、その不適切な過量使用によって出血性脳卒中の発生を招いたことがある。そこで、米国食品医薬品庁は平成12年11月に、製薬企業に対して、PPAを含有する医薬品の販売自主規制を要請した。
日本では、米国と違い食欲抑制剤として承認していないこと、1日の最大使用量が米国の67%であったことから12年11月に注意を喚起し、適正使用を徹底することとした。
その後日本において、PPAによる副作用と思われる脳出血症例がOTC薬で5例、医療用医薬品で2例発生した報告があった。年齢は、10代が2人、20代が4人、70代が1人となっている。この中には、1回で2カプセルを服用して、くも膜下出血を起こしている例のほかに、1回に20錠を飲んでいる例もあり、不適切な過量使用が背景にあることが疑われる。また、70代の人は、使用してはいけないとした高血圧症患者だ。
こうしたことから、厚生労働省は、医薬品製造業者にPPAから塩酸プソイドエフェドリンまたは硫酸プソイドエフェドリンに成分を変更するよう求めている。
OTC薬の風邪薬は、発熱、咳(せき)、鼻水、咽喉(いんこう)や関節の痛みなどの症状によって使い分ける必要がある。従って、その選択を薬剤師に相談することが重要だ。
一方、薬局・薬店では他の疾病があることで使えない成分を確認する。また、服用した後で起こりうる動悸(どうき)、悪心、顔のほてり感など副作用の初期症状を説明し、このような症状が起こった場合には、早く医師または薬剤師に相談するよう消費者に伝えていく必要がある。
医薬品を適正使用していくことは消費者にとって面倒なことかもしれない。しかし、副作用発現の当事者にならないためには、薬局・薬店で情報のやり取りが必要なことをご理解いただきたい。