『第608話』 【細菌検査とペストコントロール】食中毒や感染症を防止

毎年、学校薬剤師の実技講習会を開催している。学校薬剤師は、児童生徒が良好な学習環境で勉学に励めるように、飲料水やプール水、給食施設、照度、空気環境などの学校環境衛生基準について助言することを目的に各種の調査を行っている。

昨年から、学校環境衛生に関する測定方法の変更や測定項目が増えた。各管理項目が簡単に測定できるキットも開発されて、新たに購入した測定器具の取り扱いも実習する必要があるわけだ。

今年は、ペストコントロール協会会長から食中毒を防ぐための方法論を聞いた。その後、細菌簡易検査キットの取り扱いとシックハウスの原因になるホルムアルデヒドの測定を中心に実習を行った。ペストコントロールとは、鼠族、衛生害虫を駆除し、食中毒や感染症を防ぐことをいう。

この講演の中で重要だと感じたのは、食肉の色の変化、腐敗臭、酸っぱさなどの味は、食中毒が起こるような汚染を受けているかを判断する材料とはならないということだ。食中毒は人の五感では防げない。食中毒が起こる仕組みを知り、これに応じた対策を取ることが重要だ。

先日、大館市の中学校で起こったように、水から大腸菌群が検出されたということは、人や動物のふんによって汚染されている可能性を示す。通常、残留塩素が検出されれば大腸菌は検出されない。名水と呼ばれる水源であっても殺菌されていなければ、大腸菌を検出することがある。山深い場所にあった水源も誰でも立ち入ることができるようになった。これが汚染の原因となる。

おいしい水といっても、味では大腸菌汚染が起こっているか判断できない。そこで、残留塩素を判定して確認するわけだ。塩素殺菌をしていなければ、細菌簡易検査キットなどで確認することも必要になる。

先ごろ、本県で初めて報告されたデング熱はネッタイシマカやヒトスジシマカが媒介する。このほか、ハマダラカが媒介するマラリアなどは媒介する蚊が生息していないので、国内での感染は起こらない。しかし、コガタアカイエカが媒介する日本脳炎と同様に、ウエストナイル熱は日本にもいるイエカややぶ蚊でも媒介される。細菌検査の実施とペストコントロールは食中毒や感染症予防に欠かせない。