『第595話』 【コウジ酸含む化粧品】使用の一時中止が賢明

厚生労働省は昨年12月、コウジ酸に発がん性の疑いがあるとして、食品添加物としての使用を禁止した。ちなみに国内では、コウジ酸の食品添加物としての使用実績はない。

コウジ酸の肝臓における発がんメカニズムは明らかではないものの、遺伝毒性による可能性が否定できない。このため厚生労働省は3月7日、発がん性についての追加試験を実施することを決めた。コウジ酸と発がん性及び遺伝毒性との関係が明らかになるまでの間、コウジ酸を含有する医薬部外品及び化粧品の製造・輸入を見合わせるよう関係者に通知した。既に、化粧品の各メーカーはコウジ酸を含む化粧品を自主的に回収し、出荷を停止している。

昭和63年に化粧品原料として承認されて以来、コウジ酸を含有する医薬部外品などの使用によって、肝がんなどの健康被害が発生した症例はない。

「麹(こうじ)」は日本酒やみそ、しょうゆの製造に使われ、日本人には古来から慣れ親しまれてきた。特に本県は「酒の国」でもあり、麹という言葉に他県の人より親しみを感じている。秋田美人が色白なのは、麹を多く食べているからだという説もある。また、実際に麹を取り扱っている人の手は白い。これは、麹に含まれているコウジ酸がメラニンを生成するチロシナーゼという酵素の働きを阻害するからだ。従って、多くの美白化粧品に使われてきた。

麹はその発酵過程でコウジ酸を生産する。しかし、コウジ酸は微生物や酵素などによって分解されてしまう。実際の分析結果からも日本酒、みそ、しょうゆの中からコウジ酸を検出することができないか、検出されてもごく微量しか含んでいないことが明らかになっている。

こうした発がん性データとは逆に、みそによってがんが防げるというデータもあり、発がん性に関する結果はいまだ確定しているわけではない。

食品と化粧品では使用方法が異なるが、現状では万が一の危険性を回避するため、手元にあるコウジ酸を含む化粧品などの使用を一時中止し、追加試験の結果を待つことが賢明のようだ。