『第592話』 【内服薬】肝臓で代謝を受け効果

薬を服用している人は、常に副作用を気にしている。特に、肝臓のことが心配と電話で相談を受けることが多い。副作用を心配しすぎれば、薬を服用しなくなったり、心の病気に陥ったりする。逆に心配しなければ、副作用の発現を見逃すことになる。これらの兼ね合いを保ち、バランスよく気に留めておくことが肝要だ。

内服して使う薬は、腸管で吸収されると必ず門脈を通る。門脈の行き先は肝臓で、ここで薬物は最初の代謝を受ける。このことを初回通過効果と呼び、代謝されてしまうことをあらかじめ考えて、服用する量を決めておくこともある。中には、プロドラッグというタイプの薬がある。腸管での吸収を高めたり、高い治療効果を得るために、吸収されてから肝臓で代謝を受けて初めて薬としての効果を現す形になるのも、初回通過効果のおかげだ。

次は、薬が出ていくところの話だ。薬も食品や飲料と同様に、主にふん便と尿だ。多くの薬は水に溶けにくい脂溶性なので、肝臓で代謝を受けて、水溶性の物質に変わる。代謝した薬は胆汁と一緒に十二指腸から排せつされる。

実は、話はここで終わらない。人体は、いったん排せつした薬を再び腸管で吸収する。これを腸肝循環といって、薬が長時間効果を現す原因になることもある。しかし、100%吸収するわけではないので、やがて体内からふん便と一緒に排せつされていく。

このように、肝臓は絶えず薬物を代謝している。従って、ほぼすべての薬の説明書には「肝機能障害が起こることがあります」と書いてある。負の情報は一度発生しただけでも書く必要があって、心配させるから書かないというわけにはいかない。

通常、肝臓は十分に薬物を代謝する能力を持っている。しかし、万が一にも肝機能障害が起こらないように、医師は観察を怠らない。場合によっては定期的に血液検査を実施する。一方、薬剤師は患者さんと話をして、副作用の早期発見のための情報提供と、治療経過や日常生活上の変化から得られる情報で、副作用が起こっているかどうかを吟味する。

薬を服用したら疲れやすいなど心配なことがあれば、遠慮なくかかりつけの薬剤師にご相談いただきたい。