『第589話』 【脳卒中の予兆と予防】わずかな異常も要注意

脳卒中には脳血管が破れて出血するタイプと、脳血管をふさいで梗塞(こうそく)するタイプがある。脳出血は脳内の細い動脈がもろくなり、破れて出血する。脳梗塞は細い動脈が詰まって血流が止まり、その先の脳細胞が死んでしまうものだ。

脳卒中といえば、20数年前までは出血タイプの方が圧倒的に多かった。しかし、ここにきて梗塞タイプが上回るようになった。脳出血は塩分の高い食事や高血圧を放っておくことなどが原因だったが、食生活がバラエティーに富み、高血圧治療が早まったため減少傾向にある。

逆に、コレステロールの高い食事などで動脈硬化が進んだ結果、血管の内腔(くう)が狭くなって血液が流れにくくなったところに血栓(血の塊)ができ、血管をふさぐという脳梗塞が増加している。不整脈や心房細動、心筋梗塞などでは心臓内で血流が停滞し、血栓ができやすい。これが心臓からはがれて脳まで運ばれ、血流をふさぐこともある。

脳梗塞では、大きな発作が起こる前に前触れ症状(予兆)が出ることがある。例えば▽片方の目が見えなくなる▽顔を含む半身がしびれる▽手足に力が入らなくなる▽ろれつが回らなくなる▽言いたい言葉が出てこなくなる▽突然ものが二重に見え始める-などだ。これらの多くは5分から数10分で消失する場合が多く、あまり気に止めなかったり、過労や老化現象として見過ごされがちだ。

この前触れ症状は小さな血栓が血管に詰まり、脳梗塞と同じ状態を作ることによる。しかし、短い時間のうちに血栓が自然に溶け、血流が回復するため症状はやがて消える。ただ、こうした症状を経験した人々の2割は1カ月以内に本当の脳梗塞を起こしている。

この症状は一過性虚血発作(TIA)と呼ばれる。TIAを経験したらすぐに治療を始める必要がある。一般的には血栓ができないように抗血小板薬のアスピリンなどを服用する。アスピリンは解熱鎮痛薬として使われるおなじみの薬だが、TIA防止に使うには医師によるさじ加減が必要だ。市販されているからといって勝手に飲まないようにしたい。また、不整脈の症状を感じたことがあるなら専門医を受診すべきだ。

たばこのニコチンは血液中のコレステロールを増加させたり、赤血球を増やして血液の粘りを増加させる。禁煙は脳卒中防止に多大な効果がある。