『第583話』 【アロマバス】精油で心地良い眠りを

ローマ人の入浴好きは遺跡建造物からも証明済みだ。ローマ人に限らず、ギリシャ人も古代エジプト人も大変な風呂好きだった。それも単にお湯につかったわけではなく、バラの花びらをふんだんに入れたり、香りのいい植物を湯気のあたる場所に配置したりと、いわゆるアロマ(香り)を楽しむ入浴だった。

アロマバス(芳香浴)は、鼻から吸入された植物の香りが大脳に伝わり、脳神経に働いて神経の興奮を鎮め、いらいら感を抑えたり、穏やかな気持ちにさせたりすることができる。森の中を散策するとすがすがしい気分になる状態を、お風呂の中で再現しているといえる。

簡単にアロマバスを楽しむには精油(エッセンシャルオイル)という純度の高い物質を使う。精油は芳香植物(ハーブ)がもつ有効成分を濃縮したもので、本来は花、つぼみ、枝葉、樹皮、根などの組織細胞内の小さな袋の中に滴の形で存在している物質を、主に水蒸気蒸留法で集めたものだ。

このような抽出方法を確立するには、16世紀まで待たなければならなかった。

バラの精油一滴を取るのに約50本のバラの花びらが必要だ。この抽出方法を知らなかった当時のローマ貴族たちは、何トンものバラの花びらを直接浴槽に入れて、アロマバスを楽しんだ。

精油を使ったアロマバスの中でも、半身浴は心地良い眠りを誘う。半身浴はみぞおちの下ぐらいまでつかるように浴槽にお湯を張り、リラックス効果の強いラベンター、ジャスミン、カモミールなどの精油を数滴入れ、ゆっくりつかる方法だ。

ヘトヘトに疲れているはずなのに眠れない人や、寝るぎりぎりまで頭を使って仕事をして頭がヒートアップしてしまった人にお勧めだ。頭の温度を下げると人間は眠気が起こることが知られている。手足や体の表面を温め、血液循環をよくしてやると、その後に手のひらや足の裏からの放熱が促進される。結果的に脳の温度が下がって眠りを誘うようになる。半身浴を長くするときは温めたタオルを肩にかけるようにする。

気休めの話と思っている方はぜひお試しを。