『第579話』 【腎機能】老廃物排出以外に役割

背中の方にある臓器といえば、腎臓だ。左右に2つ、握りこぶしよりやや大きく、そら豆のような形をしている。血液をろ過して1日に150リットルもの原尿を作り、その99%を再吸収して、約1.5リットルの尿を作っている。

腎臓は、このほかにも重要な役割を担っている。まずは血圧の調節機能がある。腎臓は血液をこしとる力を血圧から得ている。血圧が低くなるとレニンというホルモンを分泌し、アンジオテンシンやアルドステロンの働きを介して、血管を収縮させて血圧を上げる。その一方で、副腎髄質からプロスタグランジンを分泌して、血管を拡張させて血圧を下げる働きをする。

次に、造血を促す機能がある。赤血球の数が少なくなって貧血になると、エリスロボエチンという造血ホルモンを分泌して、赤血球の生産を促す。

骨代謝にも関与している。ビタミンDは活性型になって初めてその能力を発揮する。その活性化を行っているのが腎臓と肝臓だ。これによって、カルシウムの吸収が高まる。

腎臓は、老廃物の排出だけではなく、電解質のバランス、血圧、造血、骨代謝と、人の生命に直接かかわる働きを担っている。ひとたび腎臓病になると、これらの機能が失われるだけではなく、他の臓器への影響も出てくる。腎臓病は遺伝的素因、種々の感染症、免疫疾患、糖尿病や高尿酸血症などの生活習慣病から起こり、その病態も多様だ。

腎臓病に限っていえば、治療に使う薬はステロイドと免疫抑制剤ぐらいで、多くの種類があるわけではない。このほかに、病態に合わせて抗生物質、抗凝血薬、さまざまな対症療法の薬を組み合わせて、厳格に薬物治療が行われる。従って、まゆつば物の健康食品などの併用はもってのほかだ。

特に民間療法で、腎臓に良いといわれるスイカ糖は、カリウムを多く含み、腎不全の人が使うと高カリウム血症に陥りやすく、頻脈や心室細動を起こす危険がある。

腎臓病は自覚症状が少なく、健康診査でタンパク尿や尿潜血を指摘されて分かることが多い。治療に当たっては、食事の内容など生活習慣にかかわる情報も合わせて伝えてもらいたい。