『第578話』 【ドライスキン】冬は保湿成分の補給を

皮膚は、外界からの刺激や細菌の侵入を防ぐとともに、体温の調節を行っている。皮膚表面から水分が蒸発するとき、水の蒸発熱が皮膚から奪われる。呼気に含まれる水分や汗が蒸発していることを実感することがないことから、この仕組みを不感蒸泄(じょうせつ)と呼ぶ。その量は、1日900ミリリットルにも及ぶ。

夏の間は汗をかき、絶えず皮膚に水分が供給され、不感蒸泄量も多い。しかし、汗を多くかくと天然保湿成分は失われやすくなり、水分が多すぎることも皮膚の角質を傷つける原因になる。

冬になると汗をかかなくなり、不感蒸泄量が減るとともに、皮膚への水分補給量が減ってくる。併せて、冬の乾いた空気が皮層表面を乾燥させて、ドライスキン(乾燥肌)になる。

皮膚は、1番上層の角層を含む表皮、皮脂腺がある真皮、脂肪組織の順に重なっている。

角層は33%の水分を含んでいて、健康な皮膚を維持するためには、この表皮の管理が重要だ。角層は表皮細胞が持っていたタンパク質のケラチン、脂質、アミノ酸から成っている。角層をレンガの壁に例えれば、レンガをつなぐのがセラミドといわれるスフィンゴ脂質だ。この部分には約12%の水分がある。ドライスキンの人はセラミドの量が減って、これに伴って角層の水分量が減少し、レンガの間にすき間ができるため、さらに水分を喪失してしまう悪循環に陥る。

表皮を覆い水分の蒸発を防ぐ皮脂の分泌量は、男性ホルモンのアンドロゲンの分泌量に依存している。アンドロゲンの分泌量が少ない子どもや高齢者はドライスキンになりやすい。

保湿作用を持つ成分として尿素、ヘパリン様物質、ヒアルロン酸などがある。尿素は安価で安全性が高い。ヘパリン様物質、ヒアルロン酸は真皮にあるムコ多糖の仲間だ。真皮にまでは浸透しないが、表皮に留まって保湿効果を発揮する。従って、入浴後、角質が適度に水分を含んでいるときに塗ると最も効果が高い。

ドライスキンの人に垢(あか)すりはもってのほか。冬はごしごしと石けんで体を洗うのではなく、皮脂を取り過ぎないようにさらっと洗い、保湿成分を補給することを心掛けたい。