『第577話』 【インフルエンザ対策月間】ワクチンの接種検討を
インフルエンザ対策準備月間に入った。今年のインフルエンザワクチンには、A/ニューカレドニア(H1N1)、A/パナマ(H3N2)、B/山東の3種類の型が使われている。
インフルエンザウイルスは、ウイルス粒子内の核タンパク複合体の抗原性によって、A型・B型・C型に分類されている。このうち流行するのはA型とB型だ。
A型ウイルス粒子の表面には、赤血球凝集素のヘマグルチニン(H)とノイラミニダ-ゼ(N)という2種類のタンパク質が突出している。これらの抗原型によってA型をさらに細く分類している。H1N1はAソ連型、H3N2はA香港型にあたる。
B型は、抗原的、遺伝的に区別する山形系統とビクトリア系統の2系統がある。今年のワクチンはビクトリア系統のものが使われている。
ノイラミニダーゼは、ウイルスが人の細胞内で増殖し、細胞を破って出るときに使う酵素だ。この酵素の作用を阻害する薬がザナミビルだ。ザナミビルは発症してから48時間以内に使用し、A型とB型の両方に効果がある。ザナミビルは粉体を吸い込んで使うため、使いにくい面があったが、平成13年2月からは、経口で使えるオセルタナビルが保険適用になった。
このほか抗インフルエンザウイルス薬には、A型が細胞内に侵入するのを阻害するアマンタジンがある。B型インフルエンザウイルスには効果がないので、10~15分程度でA型とB型を判別する検査キットを利用する。
インフルエンザが抗原変異を起こして大流行することは、読者もご存知だ。ヘマグルチニン(H)は15種、ノイラミニダーゼ(N)は九種あり、インフルエンザウイルスが水鳥と豚の間でやり取りしている間に、この組み合わせが違ってくると考えられている。その組み合わせは135通り。そのすべての組み合わせのワクチンを、事前に作ってしまおうとする研究が進められている。この研究がうまくいけば、新型のインフルエンザが出現しても、すぐにワクチンの生産に入れるというわけだ。
ワクチンの効果発現までに約1カ月、持続期間は3カ月だ。インフルエンザの流行時期を控え、必要性を考慮し、ワクチン接種を検討してもらいたい。