『第576話』 【喘息の治療薬】症状に応じ使い分ける

「張る、飲む、吸う」と、薬を指差して確認しなければならないほど、多くの薬が出ることがある。その代表が喘息(ぜんそく)患者さん向けの薬だ。

喘息の症状である咳(せき)、痰(たん)、喘鳴、呼吸困難などの症状を取り除くためにさまざまな薬剤を使うからだ。それぞれの薬には特徴的な使い方があり、慣れないと発作に間に合わないのではないかと心配する人もいる。

まず気道の炎症である喘息にステロイド剤の吸入は欠かせない。大きな発作を防ぐためには、少量のステロイドを定期的に吸入する必要がある。この薬で入院せずに日常の生活を送れるようになる人も多い。また夜間の急な発作も激減する。

薬局では、実際に患者さんに使用してもらうのと同じ器具を使って何回かデモンストレーションを行い、高齢者の場合はマンツーマンで指導して吸う感覚も確認してもらう。

4回分が入った1枚のディスクを器具に装着するものや、60回分がすでに装着されたものなど、症状によって使い分ける。

内服薬では、テオフィリンやロイコトリエン拮抗薬(きっこうやく)と呼ばれる薬を使って長期に症状を安定させ、管理する。テオフィリンは胸焼けなどの胃症状を引き起こすことがあるので、しばしばH2ブロッカーと呼ばれる制酸剤や胃薬と一緒に処方されることがある。説明すると「胃は悪くありません」という場合があるが、このような理由による。

方薬の柴朴湯(さいぼくとう)は、ステロイドの量を減らすため補助的に使われることがある。小青竜湯(しょうせいりゅうとう)や麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)、麻黄湯(まおうとう)など麻黄の入った漢方薬も喘息治療に使用される。

また、張り薬として皮膚から吸収されるタイプの喘息薬は、血中濃度の急激な上昇がなく、有効血中濃度も24時間以上にわたって持続するため、夜間や明け方に発作が起こりやすい人に有効だ。吸入タイプが難しかったり、内服が困難な人も使用できる。

もちろん、これらの薬がすべて処方される人も多く、薬局では渡し忘れのないように、指差し、声出しで確認することもたびたびだ。