『第573話』 【薬を飲むときの水】湯冷まし、コップ1杯半
薬を飲むときは、湯冷ましが最も望ましい。体温近くに温められて刺激がなく、薬の吸収を邪魔する成分もないからだ。そして、最も吸収が良くなる水の量は、250ミリリットル。約コップ1杯半に当たる量だ。
現代では水道水だけではなく、ミネラルウォーターを利用する人も多くなってきた。水のおいしさの指標となるものの1つに硬度がある。使い古したヤカンのふたの周りには、白いざらざらしたものが付着している。専門用語ではスケールといったりするが、それが硬度成分で、中身はマグネシウムやカルシウムの塩類だ。火力発電所ではこのようなスケールが出ると発電機を壊すことになるので、あらゆる成分を除去した超純水を使い、蒸気を発生させて発電している。
世界保健機関(WHO)の指針では、硬度成分のカルシウムイオンとマグネシウムイオンを炭酸カルシウムに換算した量が1リットル当たり120ミリグラム以上の水を硬水とし、逆に60ミリグラム未満の水を軟水としている。
日本の水は軟水系で20~60ミリグラム程度だ。ヨーロッパは硬水系が多い。今はやりの海の深層水の中には、1,000ミリグラム前後のものがある。ちなみに、秋田市は30ミリグラム前後の軟水だ。
水道水の基準値は1リットル当たり300ミリグラム以下となっていて、人は50ミリグラム前後の水をおいしく感じるといわれている。
骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の治療に使うリセドロン酸ナトリウムは、カルシウムイオンやマグネシウムイオンと結合し、600ミリグラムの硬水で服用すると約10%の成分が吸収できなくなる。当然、硬水よりもはるかに多くのこうしたイオンを含む制酸剤を同時に服用すればなおさらだ。
この薬は朝起きてすぐに飲み、その後30分は水以外のものを食べたり飲んだりしてはいけない。これは、空腹時に服用してもらい、吸収率を高めたいからだ。
また、服用後、30分は横になってはいけない。薬の成分によって高率で胃の粘膜に障害を与えることが分かっているので、早く胃を通過させたいからだ。横になって成分が滞留すると、胃の粘膜がただれてしまう。
細かい注意を必要とする薬は、理由を含めて理解し、薬の効果と安全性を高めてもらいたい。