『第571話』 【西ナイルウイルス】蚊が媒介、米で脳炎流行
9月23日、厚生労働省職員が米国で大流行している西ナイルウイルスの感染状況調査に向かった。
1999年8月、ニューヨーク州で北アメリカに存在するアルボウイルス及びセントルイス脳炎ウイルスに罹患(りかん)したとする報告があった。これと同時にニューヨーク州のカラスの死亡数が増加していることが観察されていた。また、ブロンクス動物園で死亡したフラミンゴ2羽、鵜(う)とアジアキジ各1羽を病理解剖した結果、その死因は、脳髄膜炎と心筋炎であった。
ヒト脳炎患者及びこれら鳥類の病理組織について、米国伝染病センター(CDC)がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて検査した結果、西ナイルウイルスであることが判明した。この流行では、約2,000人が感染して、62人が脳炎を起こし、このうち高齢者の7名が死亡している。今年の流行では、既に9名の死亡者が出て、感染域の拡大も心配されていた。
西ナイルウイルス、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルスはフラビウイルス属の中でも相同性が高く、日本脳炎血清型群と呼ばれている。
西ナイルウイルスは、アフリカ、ヨーロッパ、中東にかけてが感染地区で、米国までは広がっていなかった。日本を含む東アジアでは、まだ感染例はない。鳥類や馬、人にも感染するが、症状が出ないまま治ってしまう不顕性感染で終わることが多い。
しかし、体力がない高齢者では、急激な発熱と頭痛、めまい、発汗や発疹(ほっしん、約50%の人)が起こる。ニューヨークで流行した脳炎では、約40%の患者に筋肉の弛緩(しかん)が見られた。治療薬はなく、対症療法を試み、安静を保つしかない。
感染は西ナイルウイルスを持っている蚊に刺されることから起こる。また、今回は、輸血と臓器移植によって発生した報告があり、日本でも感染する可能性があることから、厚労省職員の派遣となった。地球温暖化によって、蚊の発生期間が長くなっていることも懸念されている。渡米する場合は、蚊に刺されないような予防対策が必要だ。