『第570話』 【臨床データ】治療の効果をモニター
毎日の生活習慣を反映する臨床データがいくつかある。肝機能検査のγ-GTPはアルコール類の多飲で上昇する。血中の尿酸値や中性脂肪値を見れば食事の内容が想像できる。
このように、臨床データはその人の生活習慣を把握する上で重要な鍵となっている。
同様に薬が効いているか、ということに関しても自覚症状だけからではなく、臨床データで確認している。
意識しているわけではないが、解熱鎮痛剤であれば、体温計で体温を測り確認する。降圧剤であれば血圧計でといった具合だ。両者はよく使われる方法なので、高い低いといったことが患者間でも話題になる。
トロンボテストという臨床検査は、脳血栓や心筋梗塞(こうそく)を予防する薬を服用している人にとって、重要な臨床データとなる。この数値によって、薬の効果や服用状況を確認(モニター)しているからだ。
血液が凝固するためには、12種類の血液凝固因子が関与している。このうち第__(プロトロンビン)・__・__・__因子の4種をビタミンK依存性凝固因子と呼び、肝臓でビタミンK存在下においてタンパク合成され、血液中に放出されている。
ワルファリンカリウムなどのクマリン系やインダンジオン系の抗凝血剤はこのビタミンK依存性凝固因子の生合成を阻害して、血栓を作らせないようにする。そして、トロンボテストによってビタミンK依存性凝固因子の量を把握することができる。
通常ワルファリンカリウムを服用している人は、トロンボテスト値が8~15%になるように薬の量を調節している。
抜歯などの小手術時では、特にこの数値が問題になり、確認する必要がある。治療水準の上限にあたる15%でも局所止血を十分に行えば安全に抜歯が行えるが、手術の大小や患者さんの状態によって、より安全性を考えなければならない場合は30~50%まで上げることもある。
トロンボテスト値は治療中に納豆を食べたり、薬を飲み忘れた場合にも上昇する。納豆は食べないよと嘘をついても、すぐに分かってしまうという訳だ。
ぜひ、自分自身の臨床データにも興味をもって、治療に参加してもらいたい。